自分自身のレジリエンスを育てる方法 ~産業保健師に必要なしなやかな強さとは~
レジリエンス(resilience)とは『しなやかな強さ、精神的回復力、復元力』などと訳され、挫折や苦境から立ち直り、回復する力としてメンタルヘルスの分野、そしてビジネスの分野でも注目されています。困難な問題やストレスに遭遇したとしても、その経験を生かし、自分自身をさらに成長させていく能力、それがレジリエンスです。
前回の記事(レジリエンスを育てよう ~アフターコロナの産業保健師に必要なしなやかな強さとは〜)では、レジリエンスについてご紹介しましたが、今回は、レジリエンスを育て、高める方法についてご紹介します。
1.レジリエンスはなぜ注目されているのか
経済・産業構造が変化する中で、個人や組織を取り囲む環境が目まぐるしく変化しています。働き方や価値観が多様化する中で、これまでとは異なる環境にストレスを感じるケースが増えています。それらに適応する力として、レジリエンスが注目されるようになりました。
そして、社内の多様なニーズに対応することが求められる産業保健職にとっても、レジリエンスは必要不可欠なスキルだといえます。
2.レジリエンスの要素
レジリエンスを日頃から身に着けておくにはどうしたらいいのでしょうか。レジリエンスを育て、磨くためには、レジリエンス力の向上に必要な要素について理解を深めることが大切です。 個人のレジリエンスの向上に必要なのは、①自分の軸、②しなやかな思考、③対応力、④人とのつながり、⑤セルフコントロール、⑥ライフスタイルの6つの要素(図1)です。そして、これらの要素は研修やコーチングなどによって高めることができます。
①自分の軸:譲れない価値観
「何を自分は大切にしたいか」、「どんな基準で自分は物事を決めているか」をしっかりと自覚できている人、つまり、自分の軸がある人は、内なる強さを持ち、困難な状況でも冷静に対処できます。自分の軸だけに頼りすぎると独断となってしまうこともあるので、違う人の意見を取り入れることも大切です。
②しなやかな思考:自分の考え方のクセを自覚して、自分と異なる意見を柔軟に取り入れることができる、 しなやかな思考を持つ人は、傾聴ができ、人から多くの情報を聞き出すことができます。
③対応力:問題を解決する力
問題を解決する力を高めるには、自分ではコントロールできない問題には距離をとって静観し、自分でコントロールできること、調整できることに注力することが重要です。
④人とのつながり :世の中には一人では解決できない問題も多く、いざというときに助けてくれる同僚や心の支えとなってくれる人がいることにより、困難を乗り越えることができます。
⑤セルフコントロール:人と衝突をしたり、傷ついたり、怒りを感じたりすることがあっても、冷静に自分の感情をコントールすることで、 落ち着いて判断し、行動できるようになります。
⑥ライフスタイル:バランスの取れた食事、運動、睡眠によって、心身ともに健康を保っている状態のことは、何をするためにも基本となるものです。ストレスを感じることがあっても、アルコールや喫煙など依存性のある行動に頼らず、自分の心身のケアのために時間を取ることが重要です。また、常に好奇心を持って新しいことにチャレンジしていくことも大切です。
3.まとめ
変化の激しい現代において、レジリエンスを育てることは、個人、そして組織にとって重要であるといえます。まずは、自分でできる取り組みからから始め、レジリエンスを育てていきましょう。
執筆:さんぽLAB運営事務局 保健師
監修:難波 克行 産業医
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参考
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