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【ウェビナーへのご質問に回答】産業保健職のキャリア形成と企業内での価値向上

産業保健職のキャリア形成と価値向上
2025年4月23日に開催いたしました『産業保健職のキャリア形成と企業内での価値向上』では、企業に求められる専門職になるためのノウハウについて事例を基にご講義いただきました。ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。
4月のウェビナーはこちら

ウェビナー内でお答えしきれない回答について、講師の三宅琢先生にご回答いただきましたので本記事にて紹介させていただきます。
三宅琢先生

目次

1.組織へのアプローチ
2.社内制度について
3.採用・キャリアについて
4.組織での立ち位置
5.その他


1 組織へのアプローチ


質問① 卒煙対策等の産業保健の取り組み

ご講演ありがとうございました。私は1000人以上の従業員を抱える企業の健康管理に携わっておりますが、専任たる産業医がほぼ出社せず、卒煙対策など産業保健の取り組みがなかなか進まず、体調不良者が増える一方で無力感を味わっております。どうにか突破口を模索しておりますが、ご助言頂けると幸いです。

■回答

どんな先生にも得意苦手がありますのでまずは産業医の先生の得意分野含めて、頼れるポイントを見つけ、頼ることで産業医の自己効力感を高めることが突破口かと思います。

質問② 医療機関への介入

病院で働いている時に、産業保健医はいましたが、全く会わず面談もなく、なぜか隠されるように対応されました。病院ほど残業やメンタルなど、多いと思います。病院は医療職だからとなかなか参入難しいのですか?

■回答

病院は院長が兼任しているケースも多く、医者の不養生と言われるように意識も低いため効果的な産業保健が機能しにくい職域かと思います。


2 社内制度について


質問③医療機関への介入

法令遵守の点で、微妙なラインだと思いますが、在職中の会社がパートさんは1ヶ月の休職で復職できなければ辞職していただくということが、社則にあります。ただメンタルで休み初めたところにそれを言うのは追い討ちになることもあり、総務も人事も施設に任せるような感じで結局、保健師に通達して欲しいようで、毎回モヤモヤしてしまいます。施設が良いなら良いと延長してるときもあったりします。それこそ仕組みが問題だと感じております。そういった場合は休みに入る時点で休職1ヶ月の後は復職できなければ退職ですと話すべきなのか、会社が社則にありながら構わないと言うならば、メンタルの様子をみて総務から伝えていただくのが良いでしょうか。よろしくお願いいたします。

■回答

予防法学を教える産業保健法務の領域では、ノーサプライズの原則というのがあります。伝え方は重要ですが、休職入りの段階で休職制度や期限については正確にお伝えする方が結果的にトラブルになりに行くと言われています。


3 採用・キャリアについて


質問④採用への関わり方

お話頂きありがとうございました。採用に関する依頼もあるとのことでしたが、産業保健スタッフとしてどのタイミングでどういった関わりをしているのでしょうか?メンタル既往がある方がキャリア採用されましたが、採用後数か月で休職に入ったケースがございまして、事前に把握できていたら別の関わりができた経験がありました。参考までに教えて頂けますと幸いです。

質問⑤ 採用ミスマッチを防ぐ面接の工夫

採用時のミスマッチを減らす面接への助言について、先生はどのようなアドバイスをなさいましたか。本日はありがとうございました!元気が出る研修でした🎵

■質問④,質問⑤への回答

業務特性としてのストレスポイントを具体的に採用時に伝えることで決定的なミスマッチを防ぐことや、既往症で判断するのではなくそこからの内省の深さを問いかけることの大切さ等を伝えています。

質問⑥一人職場の保健師がキャリアと収入を伸ばす手段

保健師一人職場です。数値目標を達成したり、業務整理で無駄を減らす等の貢献をしていますが、部下をもたないため昇進・昇給がありません。昨今の物価高、給与を上げていきたい気持ちがあります。キャリア形成しながら給与を上げていく方法・手段について、先生の意見を伺いたいです。

■回答

複数の専門性や視点を持つことで業務の幅を広げる(私の場合は障害者支援や哲学対話等)ことや、副業の可能性について打診する等も重要かと思います。

質問⑦子育て中のキャリア

3.6.8歳の子供がいて、キャリア形成の難しさを感じます。モデル事例などありましたら教えていただきたいです。

■回答

来年キャリア形成の書籍を発行予定なので参照にしていただけたら幸いです。


4 組織での立ち位置


質問⑧保健師業務のバランス

現在、総務に所属してます。保健師は私一人です。保健師業務が何か理解が少ないため、総務業務と半々で仕事してます。保健師として関わるよりも多数の接点をもてるため、逆にメリットも感じますが、人事部長からは保健師業務に専念するよう言われます。バランスの助言をいただけますか。

■回答

保健師として医学的な視点を持って現場感覚のある助言をするためには専門外の業務にも関わり現場の空気感を理解することが大切であることをお伝えいただけたら幸いです。

質問⑨産業保健業務が“放置”されないために

会社に余裕がないため(経営的にも業務的にも)、当たり障りなく産業保健業務を行っておりますが、その分、人事からも経営者からも放置的な扱いを受けています。どうしたら良い風が吹くでしょうか?

■回答

企業が危機感を持つのは問題が起きた時です、ある意味本当の意味での課題や問題が発生していないためかと思いますので情報提供はしつつも時を待つことも必要かと思います。

質問⑩企業が求める産業保健師とは

産業保健師として一緒に仕事をしたいと思う人はどんな方ですか?企業はどういった点で産業保健師を活用したいと考えていますか?

■回答

現場に学ぶ姿勢がある人、産業医に臆せずに質問ができ成長する人。


5 その他


質問⑪産業医として直面した“最も困難な場面”

現在私は、上司がいない中で心細いと感じることがございます。本日は学びが多く、たくさんのプレゼントをいただいた気分です。ありがとうございます。これまでの産業医としてのご経験の中で、特に乗り越えるのが難しかった問題を教えていただけますか?またどのように対応されていきましたか?

■回答

一人ですべての課題に対応することには限界があり、特性の異なる産業医や保健師とチームを作ることで各企業の課題に合わせた最適なサービスが提供できるようになりました。

質問⑫復職者における業務形態

現場を考えた研修で、「その復職者だけ在宅はずるい」という事例ではどのように対したのでしょうか?産業医としては以下になると想像しましたが。診断書と本人の希望がある以上、産業医としては「在宅を続けてください」とせざるを得ない。が、会社の意向もあるので、復職者には隔日の出社を提案する(出社は漸増)。在宅勤務には利点もあるので、ある程度は一般社員にも在宅勤務を導入することを提案する。

■回答

基本的には本来の求められる業務形態に段階的(3−6ヶ月等)に戻れるフローを考える(誠実労働義務)。期間を超えて大きく配慮が必要な場合は再度休職し、体調を改善させる(療養専念義務)の履行を果たせるようにする仕組みが大切かと思います。または障害者雇用枠やパートタイム正社員に契約変更する等の契約で公平性を維持することも大切です。


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