コロナ禍で変わる相談内容とカウンセリングのかたち――産業保健スタッフが押さえておきたい支援の視点
コロナ禍を経て、従業員から寄せられる相談内容に大きな変化がみられました。「仕事のストレス」は減少した一方、「プライベート」や「メンタルヘルス不調」の相談が増加。加えて、相談手段としてオンラインやSNSが注目され始めています。産業保健スタッフとして、これらの変化をどう捉え、どのような支援につなげるべきか。本記事では、最新の相談傾向と対応のヒントを解説します。
1. コロナ禍で変わる相談傾向:「仕事のストレス」が減少し「メンタル不調」が増加
アドバンテッジ相談センターの分析によると、2019年度と比較して、2020年春以降は「仕事のストレス」の相談が減少(26.7% → 22.2%)し、「プライベート」(16.3% → 24.5%)と「メンタルヘルス不調」(23.5% → 32.3%)の相談が増加しました。
この背景には、在宅勤務の普及が影響していると考えられます。通勤ストレスや職場内の人間関係から解放された反面、自宅での家族関係や育児・介護の負担、社会的孤立感が強まり、心身の不調を訴える声が増えているのです。
産業保健スタッフとしては、「仕事起因」だけでなく、「家庭起因」「社会情勢起因」のストレス要因を捉えた支援が求められます。
2. ストレスの兆候は日常に現れる――従業員自身の気づきと対処を促す
コロナ禍では「自分には関係ない」と思っていた層にもメンタル不調のリスクが拡大しました。特に、外出自粛による閉塞感やワークライフバランスの崩れが引き金となり、不眠、食欲の変化、飲酒量の増加など、心身の小さな変化が現れやすくなります。
産業保健スタッフは、従業員にこうした日常の変化に気づかせ、自身に合ったストレス対処法(趣味の再開、人に話す、専門家に相談するなど)を促すことが、早期予防のカギとなります。
3. カウンセリングはオンラインが主流に?相談方法の変化にも注目
相談内容だけでなく、相談手段にも変化が見られました。2019年度と比較すると、「電話相談」は8% → 14%、「オンライン相談」は1% → 3%に増加。一方、「対面相談」は13% → 4%に減少しました。
在宅勤務が進む中、時間や場所の制約を受けにくいオンライン相談や電話相談のニーズが拡大しています。また、SNSを活用した相談サービスも登場し、より気軽にアクセスできる体制が整いつつあります。
企業内のメンタルヘルス体制においても、これら新しい相談手段の導入・周知が、従業員の心理的ハードルを下げる一助となるでしょう。
4. 変化を前提に、柔軟なメンタルヘルス支援体制を構築しよう
コロナ禍は、働く人の心身の健康に大きな影響を与えました。従業員の悩みは「職場」だけで完結せず、生活全体に根差した問題へと広がっています。
産業保健スタッフには、「変化を前提とした支援体制」の構築が求められます。相談内容の傾向、利用されやすい相談手段、そして従業員の気づきやすいアプローチ――これらを押さえた柔軟なサポートが、これからの産業保健の現場で重要となるでしょう。
出典
アドバンテッジJOURNAL
コロナ禍において変わる相談傾向 ~カウンセリングの現場から~
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