介護と仕事の両立を支える「介護休暇・介護休業制度」最新ガイド
「介護休暇」と「介護休業」は、名前は似ていますが、「短期のスポット利用」と「長期の体制づくり」という、まったく異なる目的を持つ制度です。この違いを混同したままでは、従業員も企業も適切に制度を活用することはできません。本記事では、この2つの制度の違いを比較するとともに、産業保健スタッフや企業が、介護に直面した従業員をどのように支援するか、詳しく解説していきます。
<目次>
1.介護休暇・介護休業制度の基礎と使い分け
2.2025年からの法改正ポイント
3.企業が実施すべき対応(就業規則・周知・相談窓口)
4.産業保健スタッフが支援できること
5.まとめ
1.介護休暇・介護休業制度の基礎と使い分け
■介護休暇と介護休業のおおまかな違い
介護休暇と介護休業は名称が似ていますが、目的・利用場面・制度設計が大きく異なるため、従業員が混同しやすい制度です。産業保健スタッフが従業員から相談を受けた際には、違いを整理して説明することが求められます。
■介護休暇制度とは
介護休暇制度は、要介護状態の家族に配慮するために取得できる短期休暇です。突発的な介護や通院の付き添いなどに柔軟に対応することが可能です。
- 目的:突発的または短期的な介護ニーズに対応すること
- 対象労働者:正社員、パートタイマー、契約社員など幅広く対象(※日雇い労働者は対象外)
- 労使協定により「入社6か月未満」を対象外にできる仕組みが廃止され、入社直後から介護休暇を使いやすくなりました。
- 対象家族:配偶者、父母、配偶者の父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫など
- 日数:1年度につき5日(対象家族が2人以上の場合は10日まで)
- 取得単位:1日単位に加え、1時間単位で取得可能
- 給与:法律上、支払いの義務はなく、企業の就業規則による。無給としている企業が多い。
- 利用シーン
- 病院への通院付き添い:親が定期的に受診しており、診察や検査に半日〜1日程度の付き添いが必要な場合。
- 介護認定の申請や更新:役所での手続きや、認定調査員の訪問に自宅で同席するために時間が必要な場合。
- 介護サービス事業所などとの打ち合わせ:デイサービスやショートステイの契約・説明会などに参加する場合。
- 急な体調不良への対応:家族が突然体調を崩し、急きょ医療機関に連れていく必要がある場合。
- 訪問看護での現場ケース例
- 80代のAさんは60代の娘(パート)と同居。訪問中に本人の体調変化があり、急きょ病院受診が必要になった。娘に連絡し、職場に状況を報告して、半日の介護休暇を取得。無事、病院受診ができた。休暇を細切れに使うことで業務に大きな影響を与えず、介護と仕事を両立できた。
■介護休業制度とは
介護休業制度は、要介護状態にある家族を介護するために、労働契約を維持したまま一定期間休業できる制度です。長期的にまとまった時間を確保することが可能です。介護休業の取得条件は法律で定められており、対象となる家族の範囲や取得できる日数が明確に規定されています。
- 目的:仕事と介護の両立を支援し、介護による離職を防ぐこと
- 対象労働者:正社員、パートタイマー、契約社員など幅広く対象(※日雇い労働者は対象外)
- 対象家族:配偶者、父母、配偶者の父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫など
- 期間:対象家族1人につき通算93日まで、最大3回まで分割取得が可能
- 給与:法律上、支払いの義務はなく、企業の就業規則による。原則としては無休
- 経済的支援:一定の要件を満たす場合、雇用保険から「介護休業給付金」が支給される
- 利用シーン
- 長期在宅介護の体制を整える期間:家族を自宅で本格的に介護するため、介護体制や住環境の整備、ケアプラン作成、福祉用具の手配などにまとまった時間が必要な場合。
- 入院や退院時の集中的な対応:急な入院、または退院し在宅介護へ移る際にリハビリや介護サービス導入、一時付き添い、関係機関との調整などが必要となる場合。
- 施設入所や転居の付き添い:介護施設や高齢者住宅などへの入所手続き・引越しの付き添いなど、入所前後の生活立ち上げ支援が求められる場合。
- 病状悪化・生活環境の変化:要介護の家族が急変、認知症が進行し在宅生活が困難になるなど、集中的な介護対応や生活環境調整が必要となった場合。
- 訪問看護での現場ケース例
- 80代のBさんは50代の息子(正社員)と同居。体調不良で病院を受診し、胃がん末期と診断。本人は「自宅で最後を迎えたい」との希望あり。息子は本人の希望を叶えたいと考えた。勤務先に状況を伝え、数十日の介護休業を取得することができた。休暇の間に、生活環境や介護サービスを整備。Bさんは大きなトラブルなく在宅に戻ることができました。 このように、介護が必要になった場合でも、制度を有効に活用することで、従業員の生活とキャリアを守る結果につながります。
※介護休業給付金
- 支給額:原則として、休業開始時の賃金(休業開始前賃金月額)の67%が支給される
- 支給期間:対象家族1人につき、通算93日まで
■制度を理解することの意義
両制度は混同されやすいですが、活用シーンがまったく異なります。産業保健スタッフが従業員からの相談を受けたとき、この基本的な制度の違いを整理して説明できることがとても重要です。
また、制度の責任主体は企業であり、労働者が自由に利用できるよう整備・周知する義務があります。産業保健スタッフはその支援役として、正確な制度知識を持ち、従業員と企業を橋渡しする役割を果たす必要があります。
2.2025年からの法改正ポイント
2025年4月施行の育児・介護休業法の改正では、介護休暇・介護休業に関して重要な変更が行われました。特に「利用開始要件の緩和」と「企業に対する義務強化」が柱となります。主な変更内容は以下の通りです。
■介護休暇取得要件の緩和
これまで介護休暇は、労使協定により「入社6か月未満の労働者」を対象外としていました。2025年4月以降はこの仕組みが廃止され、入社直後の従業員でも介護休暇を取得できるようになりました。
■企業に課される「個別周知、意向確認」の義務化
介護に直面した従業員に対して、企業は以下を義務として実施しなければなりません。
- 介護休暇・介護休業制度の内容を、個別で周知し案内を行う
- 従業員の利用意向を確認する
これにより、介護に直面した労働者が適切な支援を受けられるようになり、制度を知らずに離職してしまうといったリスクを減らすことが期待されます。
■40歳時点での情報提供義務
従業員が40歳に到達した際、企業は介護と仕事の両立に関する情報提供を行う義務があります。40歳前後は親の介護に直面し始める可能性が高い時期であり、この段階での情報提供は、介護への備えや家族との話し合いを促すきっかけとなります。
■雇用環境整備の義務化
企業には以下のような環境整備の義務が課されます。
- 両立支援のための研修実施
- 相談窓口の設置
- 制度利用を妨げない雰囲気づくり
- テレワークや短時間勤務など柔軟な働き方の選択肢提示(努力義務)
3.企業が実施すべき対応(就業規則・周知・相談窓口)
企業は、介護と仕事の両立を支援するために、法令に沿った制度整備と職場環境の改善を行う責任があります。ここでは、特に重要な対応ポイントを整理します。
■就業規則と柔軟な働き方の整備
2025年4月以降、介護休暇における「入社6か月未満の労働者を除外できる規定」は廃止され、すべての労働者が利用対象となります(週2日以下勤務者は労使協定がある場合に限り除外可)。また、介護休暇は1日または1時間単位での取得が可能で、原則として企業が拒否することはできません。さらに、介護との両立を支えるために、所定外労働の免除・時間外労働の制限、短時間勤務やフレックスタイム制度の導入など柔軟な働き方を確保する仕組みが求められています。テレワークも努力義務として位置づけられており、企業は多様な働き方を準備する必要があります。
■情報提供と周知の徹底
介護に直面した従業員には、個別に制度内容を説明し、利用意向の確認を行います。また、40歳に到達した従業員には、介護と仕事の両立に関する情報提供を行う義務があります。
加えて、社内ポータルや説明会などで制度を広く共有し、企業側から情報を伝えることで「使いやすい雰囲気」を作るのが効果的です。
■相談窓口の設置と丁寧な対応
窓口では、従業員の体調や生活状況、課題を総合的にヒアリングし、業務量の調整や職場環境調整の検討を行います。介護内容が専門的な場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーなど外部機関につなぐ仕組みを用意することも重要です。
■雇用環境の整備
2025年の改正により、研修の実施(管理職を含む)、相談窓口の設置、事例の周知などの雇用環境整備は義務となりました。加えて、介護休業等を理由とした不利益な取扱いやハラスメントは法律で禁止されており、企業は誰もが安心して制度を利用できる環境を整える必要があります。こうした取り組みを通じて「自分も制度を使える」という実感を持たせ、日常的に家庭状況を共有しやすい文化を作ることが、介護離職防止につながります。
4.産業保健スタッフが支援できること
■健康相談の場から介護リスクを早期に把握
産業保健スタッフは、定期健康診断や日常の面談を通じて、従業員の生活状況を把握できる立場にあります。体調不良を訴えている従業員の背景に、介護負担が隠れていることも少なくありません。健康相談の延長線上で介護の有無を確認し、必要に応じて制度利用を促すことが重要です。
■制度選択の案内
従業員から「介護で休みたい。」と相談があった場合、介護休暇で対応可能か、それとも介護休業が必要なのかを、適切なアドバイスを行います。また、社内の介護制度の担当者や相談窓口を案内します。
■心身の健康フォローと復職支援
介護と仕事を両立する従業員は、慢性的な疲労やストレスを抱えていることがあります。産業保健スタッフは、メンタルヘルスチェックやストレス相談を通じて早期に不調をキャッチし、産業医面談や外部の専門機関への紹介につなげることができます。介護休業からの復職時には、業務負担の調整や職場適応のサポートも重要です。
介護うつの原因や事業所ができる対策について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください👇
■職場への橋渡しと調整役
介護を抱える従業員は、職場に事情を伝えにくいことがあります。産業保健スタッフは本人と職場の間の調整役として、勤務時間の工夫や在宅勤務の利用など、個別の働き方の調整を行います。また企業に対しては、業務上どのような配慮が望ましいか具体的に助言する役割を担います。
■人事労務部門との連携
制度の具体的な手続きや給付金の申請は、人事労務部門の役割です。産業保健スタッフは、従業員から相談を受けたら制度の概要を説明し、速やかに担当窓口へつなぐ役割を担うことが重要です。従業員が一人で抱え込まず、スムーズに正式な手続きに進められるよう支援します。
5.まとめ
短期的な休暇と長期的な休業を正しく使い分けることが、仕事と介護の両立支援の第一歩です。これらの制度を整備・周知することは、法的義務であると同時に、優秀な人材を守り、企業の持続的成長を支えるための戦略的投資です。制度運用の主体である人事労務部門と、従業員に最も近い立場の産業保健スタッフが密に連携することが、両立支援の鍵と言えます。
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■参考
1)介護休業制度|厚生労働省
2)介護休業について|厚生労働省
3)仕事と介護 両立のポイントーあなたが介護離職しないためにー|厚生労働省
■執筆/監修
<執筆> あけの55(看護師、保健師)
看護大学卒業後、大学病院循環器内科・心臓血管外科で6年間従事。心不全療養指導士を取得。その後訪問看護ステーションに転職し、現在は看護主任として勤務。急性期から慢性期、在宅医療までの幅広い経験を活かし、Webライターとしても活動中。
<監修> 難波 克行 先生(産業医、労働衛生コンサルタント)
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆。YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信。
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』

