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産業保健スタッフ向け 健康情報等の取扱いFAQ―事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き(2019年3月)に基づく―

はじめに

本記事は、「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」に基づき、事業場における健康情報等の取扱いについてFAQ形式で整理したものです。
手引きでは、事業者が労働安全衛生法(安衛法)・じん肺法に基づく健康診断結果等を含む「労働者の心身の状態に関する情報」を保有し、健康確保措置のために活用することが求められる一方で、不適正な取扱いにより人事上の不利益につながるおそれがあるため、慎重な取扱いが必要であるとされています。
また、事業者は労使の協議により、目的・方法・権限等を取扱規程に定め、労働者に周知する必要があるとされています。


目次

  1. 健康情報等と取扱規程の基本を理解する
  2. 健康情報等の取扱い体制と管理方法
  3. 健康情報等の分類と取扱いルール
  4. 本人同意・第三者提供の考え方
  5. 適正管理と継続的な運用
  6. 実務チェックリスト(規程策定・運用の確認)

1. 健康情報等と取扱規程の基本を理解する

Q1. 『健康情報等』とは何ですか?

A. 事業者が、安衛法・じん肺法に基づく健康診断や健康確保措置のための活動を通じて得る『心身の状態に関する情報』のうち、個人情報保護法第2条第3項に規定する『要配慮個人情報』に該当するものを、本手引きでは『健康情報』と定義し、これを含む情報を『健康情報等』としています。

Q2. 『要配慮個人情報』とは?

A. 本人の病歴等を含み、不当な差別・偏見その他の不利益が生じないよう、その取扱いに特に配慮を要する個人情報を指します。安衛法に基づく健康診断結果、事後措置の内容、保健指導・面接指導の内容、労働者から任意に提供された病歴等が例示されています。

Q3. 取扱規程を作る目的は何ですか?

A. 健康情報等が労働者本人への『健康確保措置の実施』『民事上の安全配慮義務の履行』の目的の範囲内で適正に使用され、労働者が不安なく健康相談等を受けられる環境を整えるために、取扱いを明確化することが目的とされています。

Q4. 取扱規程は誰が作るのですか?

A. 取扱規程は労使の協議により策定することが求められます。常時使用する労働者50人以上の事業場では衛生委員会等で審議することが求められ、50人未満の事業場においては、関係労働者の意見を聴く機会を設け、意見聴取した上で策定することが求められます。なお、事業場単位ではなく、企業単位で策定することも可能とされています。

Q5. 取扱規程に『必ず定めるべき事項』は?

A. 「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」に沿って、原則として健康情報等の取扱いに関する(1)~(9)の事項を定める必要があるとされています。
(1)目的及び取扱方法
(2)取り扱う者及びその権限と情報の範囲
(3)目的等の通知方法と本人の同意取得
(4)適正管理の方法
(5)開示・訂正等の方法
(6)第三者提供の方法
(7)事業承継、組織変更に伴う情報等の引継ぎに関する事項
(8)苦情処理
(9)取扱規程の労働者への周知方法

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2. 健康情報等の取扱い体制と管理方法

Q6. 健康情報等を取り扱う『主な目的』は?

A. 主な目的は、労働者本人に対する健康確保措置の実施と、事業者が負う民事上の安全配慮義務の履行です。なお、事故防止等の観点から、法令や業務上の必要性が認められる範囲で、同僚や顧客の安全確保に関わる場面において取り扱うことがあります。これらの目的は、分かりやすく示す必要があるとされています。

Q7. 取扱方法とは、どのような行為を指しますか?

A. 取扱方法の例としては、以下のようなものが挙げられています。

  • 収集(情報の入手・記録を含む)
  • 保管(紙媒体・電子媒体による保管)
  • 使用(閲覧・活用・第三者提供・紙媒体のデータ化を含む)
  • 加工(目的達成に必要な範囲での変換、例:医師の意見への置換等)
  • 消去(削除・識別不能化)

Q8. 健康情報等を取り扱う者(担当者)の例は?

A. 具体例として、下記が示されています。

  • 人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者:社長・役員・人事部門の長等
  • 産業保健業務従事者:産業医、保健師・看護師、衛生管理者、衛生推進者等
  • 管理監督者:所属長等
  • 人事部門の事務担当者:人事部門の長以外の事務担当者

Q9. 担当者ごとの権限(誰がどこまで閲覧・取扱いできるか)は、どのように決めますか?

A. それぞれの担当者が扱える情報の範囲は、衛生委員会等の場で労使関与の下で検討し、事業場の状況に応じて定めることが求められます。守秘義務が法令で課されていない者が取り扱う場合は、取扱規程等で守秘義務を取り決めることが望ましいとされています。

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3. 健康情報等の分類と取扱いルール

Q10. 健康情報等はどのように分類されますか?

A. 本手引きでは、3分類で整理しています。
①労働安全衛生法令に基づき、事業者が法令上の義務を履行するために必ず取り扱う健康情報等
②法令に基づき本人同意なく収集できるが、取扱規程による適正な運用が求められる健康情報等
③法令上、事業者による直接の取扱いが規定されておらず、本人同意の取得と取扱規程による適正な運用が必要な健康情報等

Q11. 3分類のうち、①(法令上、事業者が必ず取り扱うもの)には何が含まれますか?

A. 例として、下記が挙げられます。

  • 健康診断の受診・未受診の情報
  • 事後措置について医師から聴取した意見
  • 事業者が講じた措置の内容
  • 長時間労働者の面接指導の申出の有無や事後措置に関する医師の意見・措置内容
  • 高ストレス者の面接指導の申出の有無や事後措置に関する医師の意見・措置内容

Q12. 3分類のうち、②(同意なく収集可だが取扱規程で運用が求められるもの)が重要な理由は?

A. ②は法令に基づき把握できるものの『必ずしも事業者が直接把握する必要がない情報』とされ、労働者がその取扱いについて十分に納得できるよう、取扱う者を制限したり、医療職種が加工した上で事業者が取り扱う等の対応が求められます。

Q13. 3分類のうち、③(本人同意の取得と取扱規程による運用が必要なもの)には何が含まれますか?

A. 例として、下記が挙げられます。

  • 法定外項目の健診結果
  • 精密検査結果
  • がん検診結果
  • 法令に基づかない保健指導や健康相談の結果
  • 職場復帰面談の結果
  • 治療と仕事の両立支援等に関する医師の意見書
  • 通院状況等の疾病管理情報
  • 労働者から任意に提供された病歴等

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4. 本人同意・第三者提供の考え方

Q14. 目的等の通知・公表はどうすべきですか?

A. 事業者は、健康情報等を収集するに当たり、その利用目的をあらかじめ公表するか、情報取得の際、速やかに本人へ通知または公表する必要があります。
方法としては、イントラネットへの掲載、パンフレットの配布、窓口への備付け、掲示板への掲示、メールの一斉配信(BCCの利用等)などが例示されています。
利用目的を変更する場合は、変更後の利用目的について、本人への通知または公表その他法令・指針に沿った対応が必要です。希望があれば、詳細な説明や書面交付を行うことが求められます。
退職者の健康情報等を取り扱う場合も同様の対応が求められます。退職者等は事業場のイントラネット等を閲覧できないため、郵送等で通知する等の方法を併用することが考えられます。

Q15. 本人の同意はどのように取得しますか?

A. 健康情報等の取得には、法令上の例外を除き、利用目的や取扱方法を周知した上で本人同意を得る必要があります。
同意取得の例として、口頭、書面(電磁的記録を含む)、メール、チェック欄、Webボタンのクリック、音声入力やタッチ等が挙げられています。いずれの場合も、同意取得の事実の裏付けとなるものを残すことが適当とされています。

Q16. 就業規則に盛り込めば『同意』になることはありますか?

A. 健康情報等の取扱い方法や同意の取得方法を就業規則等に定めて周知することは有効な取組とされています。ただし、就業規則に定めているだけでは、健康情報等の取扱いについて包括的な同意を得たことにはなりません。
一方で、労働者が利用目的等を理解した上で、自らの意思で健康情報等を提出した場合には、その提出した範囲で同意があったものと考えられる場合があります。なお、情報の内容や利用目的によっては、別途本人から明示的に同意を得ることが必要とされています。

Q17. ストレスチェック結果の同意取得で注意すべき点は?

A. ストレスチェック結果が労働者本人に知らされていない時点で、事業者への提供同意を取得することは不適当であり、事業者は実施前または実施時に同意を取得してはならない、とされています。
結果通知後に、本人の意思を個別に確認することが求められます。

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5. 適正管理と継続的な運用

Q18. 適正管理とは何ですか?

A. 個人データについて、①必要な範囲で正確かつ最新の内容に保つこと、②漏えい・滅失・改ざん等を防止するため、権限のない者によるアクセスを防ぐなどの安全管理措置を講じること、③保管が不要となった情報を適切に消去すること等を指します。

Q19. 安全管理措置にはどのような例がありますか?

A. 下記が例示されています。

  • 組織体制等の整備(責任者等の設定、定期的な評価・改善の実施)
  • 漏えい時の報告連絡体制の整備
  • 契約時点での守秘義務規程の整備
  • 健康情報等を取り扱う者に対する教育研修の実施
  • 物理的措置(施錠、入退室管理、媒体持込・持出の禁止、離席時におけるパソコン等のロック等)
  • 技術的措置(アクセス管理、アクセス記録の保存、ソフトウェアの脆弱性対策等)

Q20. 情報の消去はどう考えますか?

A. 利用する必要がなくなった個人データについては、遅滞なく消去するよう努める必要があります。ここでいう消去には、単に削除するだけでなく、個人を識別できない状態にすることも含まれます。紙媒体は裁断、溶解、焼却等により、電子媒体や記録用機器についても復元が困難な方法により、適切に廃棄・消去することが求められます。

Q21. 保存期間はどう決めますか?

A. 健康診断結果等、法令で保存期間が定められている場合は、その期間まで保有が必要です。安衛法で保存期間が定められていない健康情報等は、利用目的に照らしあわせて必要な範囲で、保存期間をあらかじめ定めることが望ましいとされています。退職者の健康情報等も同様に扱い、目的を達成したものは遅滞なく消去するよう努める必要があります。

Q22. 委託(外部)する場合の注意点は?

A. 健診結果等の入力・管理等を外部に委託する場合は、どの担当者がどの範囲まで取り扱うことができるかを明確にした上で、委託先が取扱規程に沿った安全管理措置を講じるよう委託契約を締結し、事業者が必要かつ適切な監督を行う必要があるとされています。再委託がある場合には、その内容も確認しておくことが望ましいとされています。

Q23. 第三者提供は原則どうなりますか?

A. 健康情報等を第三者へ提供する場合は、法令に基づく場合などの例外を除き、事前に本人の同意を得ることが必要です。
一方で、委託先への提供、要件を満たした共同利用、同一事業者内での共有、事業承継に伴う引継ぎなどは、個人情報保護法上の「第三者提供」に当たらない場合があります。そのため、まずはその提供が第三者提供に該当するかを確認した上で、本人同意の要否を判断することが重要です。

Q24. 事業承継・組織変更での引継ぎは?

A. 合併・分社化・事業譲渡等で健康情報等を取得する場合は、安全管理措置の下で適正に引き継ぐ必要があります。承継前の利用目的の達成に必要な範囲内で取り扱う限り、直ちに目的外利用とはならず、通常は改めて本人同意を要しないと整理されています。ただし、当該範囲を超えて利用する場合は、本人同意等の追加対応が必要です。

Q25. 苦情対応はどう整備すべきですか?

A. 健康情報等の取扱いに関する苦情へ適切かつ迅速に対応できるよう、窓口や対応手順を整備し、その連絡先や手続方法を労働者へ周知することが求められます。必要に応じて、産業医や保健師等と連携できる体制を整備することが望ましいとされています。

Q26. 取扱規程はどう周知しますか?

A. 取扱規程は就業規則や社内規程等で定め、労働者に広く周知し適正に運用される必要があります。事業場の見やすい場所への掲示、社内メール、イントラネットへの掲載、冊子配布、社内研修等が例示されています。

Q27. 取扱規程は作って終わりですか?

A. 取扱規程策定後は、関係者教育・啓発を行い、運用状況を随時確認し、必要に応じて見直すことが必要とされています。見直しも衛生委員会等で労使関与の下で検討し、見直した内容は周知が求められます。


6. 実務チェックリスト(規程策定・運用の確認)

  • 取扱規程が、指針の(1)~(9)の項目を網羅しているか
  • 健康情報等を『3分類』で整理し、担当者ごとの権限範囲(閲覧・加工・提供等)を明確化しているか
  • 目的の通知・公表方法(イントラネット、掲示、メール等)と、目的変更時の手順が定義されているか
  • 同意の取得・記録の保存(メール保存等)の手順があるか(ストレスチェックは例外に留意)
  • 適正管理(正確性・安全管理措置・消去)のルールと、委託先監督・再委託管理が定義されているか
  • 第三者提供・共同利用・事業承継の扱いと、必要な記録・保存が定義されているか
  • 苦情窓口と連携体制、周知方法(研修含む)、運用点検・見直しサイクルがあるか


※本FAQは一般的な実務整理を目的として作成したものであり、個別事案に対する法的判断を示すものではありません。実際の運用に当たっては、最新の法令・指針等を確認の上、必要に応じて専門家にご相談ください。
出典:厚生労働省「事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き」(2019年3月)より作成。(2026年4月30日利用)
※本記事は上記資料を参考に、当社が編集・作成しました。
※本記事の作成にあたり、文章整理にAIを補助的に活用しています。


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