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コーチングスキルで広がる産業保健師の可能性

厚生労働省が発表している標準的な健診・保健指導プログラムでは、健診や保健指導実施者に求められる能力の基盤の1つとして、コーチング技術が挙げられています。
保健指導技術の向上のためには、このような技術を理解したうえで、実際の保健指導に適用していくことが求められます。
本記事では、コーチングが産業保健活動にどのように役立つのか、具体的な場面やスキル、そして学び方について解説します。

【目次】

1. コーチングとは
2. コーチングスキルが求められる場面
3. コーチングで求められるスキル
4. コーチングの手法
5. コーチングを学ぶ
6.まとめ

1. コーチングとは

コーチングとは、相手の本来持っている能力や強み・個性を引き出し、目標実現や問題解決のために自発的行動を促すコミュニケーション技術です。セルフマネジメント支援のための技術としても注目されています。
コーチングの技術を世界で初めてビジネスに応用したジョン・ウィットモアは、コーチングを、「答えを与えず、質問をして答えを考えてもらい、答えを引き出すこと」としています。
保健指導では、ティーチングなど、他の技術と使い分けながら支援をしていくことが求められています。

2. コーチングスキルが求められる場面

産業保健活動において、コーチングスキルはどういった場面で活用できるのでしょうか。

①特定保健指導
特定保健指導の場では、生活習慣病予防のために、従業員の行動変容を促すことが主な目的です。
しかし、対象者の生活習慣を変えるのは簡単なことではありません。
ここでコーチングスキルが有効にはたらきます。対象者が自らの問題に気づき、
主体的に行動を改善するためには、保健師として相手の気づきを引き出し、
行動意欲を高める必要があります。

②保健師面談
従業員との面談では、単にアドバイスをするだけでなく、コーチングを取り入れることで、
従業員が自身の健康課題に対して深く考え、自ら行動を変える意欲を持つように
サポートできます。
保健師は、相手の意識を変えさせる「気づき」の重要性を理解し、
そのための効果的な対話を進める役割を担います。

3. コーチングで求められるスキル

傾聴

コーチングの基本は「傾聴」にあります。相手の話を受け身で聞くのではなく、能動的に言葉の背後にある感情や意図を深く理解する姿勢が求められます。従業員が安心して自分の考えを表現できる環境を作り出すことで、保健師として信頼を築き、より深い対話が可能となります。

質問

コーチングにおいて効果的な質問を投げかけることは、相手に新しい視点を与え、自己洞察を促す手段です。オープンな質問を使い、従業員が自分自身で問題の本質を見つけ出し、解決策を考えるプロセスを支援します。

承認

コーチングでは、相手の努力や成長を認める「承認」も重要なスキルです。従業員が自分の進歩に気づくことで、さらなるモチベーションが生まれ、行動を継続しやすくなります。

4. コーチングの手法

GROWモデル

GROWモデルは、コーチングでよく使われるフレームワークです。

Goal|目標
Reality|現状
Options|選択肢
Will|意志

これらの4つのステップを通じて、従業員の目標達成を支援します。例えば、特定保健指導の場面では、まず対象者の健康目標を明確にし、現状を確認したうえで、達成に向けた具体的な選択肢を検討し、最終的に行動計画を立てます。

SMARTモデル

SMARTモデルは、目標を明確で達成可能な形に設定するための基準です。

Specific|具体的に
Measurable|測定可能な
Achievable|達成可能な
Relevant|関連性のある
Time-bound|時間成約がある、期限を設定する

これらの5つの要素に基づいて、現実的な目標設定をサポートします。この手法を活用することで、目標に向けたアクションプランがより具体的になり、成果を上げやすくなります。

5. コーチングを学ぶ

学び方

コーチングを学ぶには、保健指導実施者を対象とした研修会やオンライン講座、ワークショップへの参加、実際の業務でのフィードバックを通じて実践する方法があります。また、コーチングに関する書籍やリソースを活用し、最新のエビデンスを日々情報収集に努めることが望まれます。

学びから得られる効果

①人間関係のスキル向上
コーチングスキルを身につけることで、従業員とのコミュニケーションがより効果的になり、信頼関係を築くことができます。相手の話に耳を傾け、適切な質問を投げかけることで、深い対話が生まれ、職場全体の人間関係も改善されます。

②問題解決能力の強化
コーチングでは、従業員が自己解決能力を高める手助けをするため、複雑な問題にも柔軟に対応できるようになります。保健師として、様々な課題に直面する中で、新しい視点を取り入れる力が養われるかと思われます。

6. まとめ

コーチングスキルを習得することは、産業保健師としてのキャリアに大きなプラスとなります。従業員の健康促進において、彼らの自主的な行動を引き出すことができ、職場全体の健康意識向上にも貢献します。コーチングを通じて、従事できる業務の幅が広がり、保健師自身のスキルも磨かれます。
コーチングスキルを学び、実践に取り入れてみましょう!

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