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健康診断結果の活用方法~ニーズに基づく個人、組織へのアプローチ

健康診断は、労働者の健康状態を把握し、予防医療や健康増進のための施策を検討する上で重要な役割を果たします。
本記事では、健康診断の結果を活用する方法について探求し、労働者の健康管理に役立つアプローチを紹介します。


【目次】
1.個人の健康状態の把握とフォローアップ
2.ニーズに基づいた施策と組織へのアプローチ
3.まとめ



1.個人の健康状態の把握とフォローアップ

健康診断は、受診をしただけでは健康になることはできません。その結果をもとに、必要な対応をしてはじめて、その効果を上げることができると言えるでしょう。
事業者の安全配慮義務、そして、労働者の自己保健義務を果たすためにも健康診断結果をどのように活用していくかが重要です。まずは、個々の労働者の健康状態の把握をすることから始まります。
事業所では健康診断結果の有効活用のために、医師の総合的な判定を行います。

・診断区分
 医療機関を受診するべきか、精密検査は必要か、等の医療上の判定
・就業区分
 通常勤務でよいか、就業制限・禁止をする必要があるのか、事後措置する際に用いる判定
・指導区分
 労働者が自己保健義務果たすため、保健指導等の介入を行うために用いる判定


健康診断結果を、労働者ごとに詳細に分析し、健康リスクを特定していきましょう。
必要に応じて、個別の健康改善プランやフォローアップ措置を提案し、労働者の健康状態の改善を支援します。

基準値内だったら問題ない?

検査結果が基準値から外れていなかった人でも、健康診断結果をより有効に活用するために下記ポイントに着目して、健診結果の見直しを促しましょう。

  • 検査値の経年変化を見る: 各検査項目の数値が過去からどのように推移しているかをチェックして、自分のからだの変化を確認しましょう。
  • リスクの重複をチェック: 検査項目1つずつ見るだけでなく、複合的に検査項目の結果をみて、高血圧・脂質異常・高血糖などの生活習慣病、動脈硬化等のリスクが重複していないかチェックしてみましょう。
  • 検査数値の原因を自分なりに振り返る: 健康のためにチャレンジした取り組みや課題があるのではないでしょうか。自分自身の生活習慣を見直すきっかけとして健康診断結果を活用しましょう。


2.ニーズに基づいた施策と組織へのアプローチ

健康診断結果の活用は、労働者個人に向けたものだけではなく、組織へのアプローチも重要となります。健康診断結果に基づいた健康教育プログラムや運動プログラムの開発を促進し、労働者の健康意識の向上を図りましょう。

効果的な取り組みを実施するには、企業・組織内のニーズを正確に理解することが欠かせません。また、予算を確保し、社内の承認を得て活動するため、同業他社とのデータを比べ、経営的な視点からニーズを把握することも有効です。様々な視点から、企業にとって優先順位を付け、具体的なデータに基づく評価を行い、適切な計画を立てましょう。

ニーズに基づいた健康プログラム

労働者のニーズに合わないプログラムを展開しても、そもそも利用されない可能性があります。
いわば顧客となる労働者の視点に立ち、健康診断結果やストレスチェック等、企業内にある多くの健康データを活用し、関心が高まっている課題を把握していきましょう。
健康保険組合との連携を通じて、診療報酬明細書(レセプト)のデータから受療状況や医療費についても把握することができます。コラボヘルスとしてプログラムを展開する場合には、労働者の家族(被扶養者)の視点も取り入れると良いでしょう。
これらのデータを解析することで、どのような健康プログラムが必要か分析することができます。複数のデータをクロス集計し、戦略的に健康プログラムを組み立てましょう。

健康プログラムの安全性、エビデンス

健康プログラムの実施は、健康を取り扱うため、介入に伴い、有害な事象等が発生することは避けなければなりません。プログラムの安全性の確保は不可欠となります。
ですが、予防的な健康プログラムでは、その有効性や安全性を確保することが難しい場合があります。どのような情報をもとにプログラムや施策を組み立てたのか、参考にした情報に健康リスク等がなかったか、確認をしていきましょう。
健康に関連する安全性や有効性のエビデンスは常に変化し、アップデートされていきます。産業医等の専門家と密に連携を取り、最新の知見を確認するよう心がけましょう。

外部委託機関、ヘルスケアサービスの活用

事業所内の資源は限られており、外部委託機関やヘルスケアサービスを利用することが有効な場合があります。多様なニーズに合わせて、健康プログラムを選定していきましょう。
上記で示したようなデータ分析やニーズ・課題の抽出、施策の立案を行うサービスから、保健指導や健康教育の介入サービスを行うものがあります。また、実施した健康プログラムの評価を依頼する際は、個人情報の保護を含めた情報管理の仕組みを整えることが重要です。
外部委託をする場合も、外部事業者と事業所内担当者が協働し、評価をしていく姿勢が大切です。



3.まとめ

健康診断結果の活用方法は多岐にわたりますが、事業所の現状に沿った取り組みを実践し、労働者の健康増進と健康経営の推進に貢献していきましょう。
健康診断結果を有効活用し、個人そして組織へのアプローチを通じて、様々な健康施策が可能となります。また、実践した施策をそのままにはせず、定期的に評価をしていきましょう。施策を打ち出す時点で、その評価方法について定めておくことも大切です。効果的な評価指標を設定し、次の施策の改善に繋げていきましょう。




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