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人的資本経営とは?産業保健スタッフが知るべき人材戦略の基本と実践ポイント

人的資本経営は、企業の成長に不可欠な人材を「資本」として捉え、その価値を最大化する経営手法です。多様化する働き方や厳しい労働環境の中で、産業保健スタッフも人材の能力発揮を支える重要な役割を担います。本記事では、人的資本経営の基本概念から、経済産業省が示す変革の方向性、人材戦略の具体的ポイントまでわかりやすく解説します。


1. 人的資本経営とは何か

人的資本経営は、経済産業省によると「人材を企業の資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで中長期的に企業価値を向上させる経営のあり方」です。人材は単なるコストではなく、投資対象と考えられ、従業員の能力や経験、意欲を戦略的に活用します。産業保健スタッフは、この考え方を踏まえ、従業員が健康で最大限に能力を発揮できる環境づくりに関わることが求められます。

2. 人的資本経営が求められる背景

労働人口減少や働き方の多様化により、従来の一律な管理では成果が出にくくなっています。リモートワークや時短勤務、外国人雇用など多様な背景を持つ従業員が増える中で、個々の事情を理解しながら適材適所を実現することが重要です。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)視点からも持続可能な企業経営のため、人材の活用は企業戦略の核となっています。

3. 人的資本経営実現に向けた変革の方向性

経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」では、企業が経営理念に立ち返り、人材戦略を経営戦略と連動させることが必要と示されています。経営陣がリーダーシップをとり、人材戦略の進捗を管理・発信することが持続的な企業価値向上の基盤です。

4. 3つの視点(3P)による推進

人的資本経営推進には以下の3つの視点が重要です。

■経営戦略と人材戦略の連動

CHRO(最高人事責任者)を設置し、経営視点と人事視点の両方から戦略を立案・管理します。

■「As is‐To be」ギャップの定量把握

現状と目標のギャップを数値化し、改善計画を立てます。

■実行プロセスによる企業文化の定着

PDCAサイクルを回しながら、企業理念や望ましい行動が従業員に浸透するよう働きかけます。

5. 人材戦略の5つの共通要素(5F)

人的資本経営で重視される人材戦略のポイントは以下の通りです。

■動的な人材ポートフォリオの策定・運用

中長期的な人材ニーズを把握し、専門性や多様な採用を進めます。

■知・経験のダイバーシティ&インクルージョン

多様なバックグラウンドを持つ人材の活用とマネジメント力強化。

■リスキル・学び直しの推進

DXなど経営戦略に応じた能力開発を促進。

■従業員エンゲージメントの向上

従業員の主体性や満足度を高める施策を実施。

■健康経営の推進

産業保健スタッフとして最も関わる部分。従業員の健康維持・増進を通じて、企業全体の生産性向上を支援。

産業保健スタッフにとって、人的資本経営は単なる経営用語ではなく、従業員の健康管理や働き方支援を戦略的に位置づけ、企業の持続的成長に貢献する重要な枠組みです。今後は産業保健の現場からも人的資本経営を理解し、積極的に関与していくことが求められています。

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出典

アドバンテッジJOURNAL
人的資本経営とは?求められる背景や取り組み方「3P5F」を解説

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