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産業保健スタッフ必見:WHO推奨のストレス対処法「思考・感情のフックをはずす」具体ステップ解説

職場のストレス対策は産業保健スタッフの重要な役割です。世界保健機関(WHO)が推奨するストレス対処スキルの中でも、特に「思考や感情にフックされる状態から抜け出す」方法は、実践的かつ効果的です。本記事では、ストレスにより思考や感情にとらわれがちな時に、自分自身や対象者が意識的に気づき・名づけることでフックをはずし、目の前のタスクに集中できるようになる具体的な手順を解説します。産業保健の現場で役立つセルフケア指導としても活用可能な内容です。


1. 「フック」とは何か?ストレス時の思考・感情の罠

ストレスがかかると、人は「自分にはできない」「あの失敗が怖い」などの思考や、それに伴う感情に意識が強く引っ張られ、目の前の仕事やコミュニケーションに集中できなくなることがあります。これがWHOの言う「思考や感情にフックされる状態」です。産業保健の場面でも、こうした状態は業務効率の低下やコミュニケーションの障害につながるため、適切な対応が求められます。

2. フックを「はずす」ことの重要性と難しさ

多くの人は嫌な思考や感情を忘れようとしますが、これは逆に苦しさを長引かせ、健康的な行動から遠ざかる原因になります。やけ酒や過食などの一時的な逃避行動も同様です。WHOは「忘れる」のではなく「フックをはずす」ことを提唱しており、これは思考や感情を完全に消すのではなく、距離を取って冷静に向き合うことを意味します。

3. フックをはずすための最初の2ステップ「気づく」と「名づける」

思考や感情にフックされたと感じたら、まずは以下の2ステップで対応します。

①気づく

過去の出来事を繰り返し考えていないか、未来の不安にとらわれていないか、自分を否定する考えが浮かんでいないかを意識的に確認します。
感情の場合は、体のどの部位に不快感があるか具体的にイメージすると気づきやすくなります。

②名づける

気づいた思考や感情を「○○がある」と言葉にします。例えば、「つらい記憶がある」「胸の締め付けがある」などです。
さらに「気づいた」という言葉を付け加えることで、心の距離を取る効果が高まります(例:「つらい記憶があると気づいた」)。

4. フックをはずす効果と産業現場での活用

この2ステップを繰り返すことで、思考や感情にとらわれていた状態から抜け出し、五感を使って現在に集中できるようになります。結果として、以下のような効果が期待できます。

  • 仕事の効率向上(PC作業や会議での集中力アップ)
  • 同僚や部下・上司とのコミュニケーションの質の改善
  • 職場でのストレス軽減とウェルビーイングの促進

産業保健スタッフは、従業員にこの具体的なセルフケア方法を伝えることで、職場全体のストレス管理を支援できます。

5. 継続的な実践のすすめ

思考や感情のフックは突然やってくるものです。そのたびに「気づく」「名づける」を繰り返し行い、フックをはずす練習を積むことが大切です。落ち着いている時に一日の終わりに振り返るなどして、習慣化を促すとより効果的です。

もっと詳しく知りたい方はこちら

出典

アドバンテッジJOURNAL
WHOが勧めるストレス対処のセルフケア(その2)~思考や感情のとらわれから自由になる~

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