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がん治療と仕事を両立させるためにできることは

がんは日本人の2人に1人がかかると言われており、ご自身だけでなく家族や友人、同僚ががんになって治療をしているといったケースも多いでしょう。また、がんと診断されて退職・廃業した人は19.8%、初回治療までに退職・廃業した人が56.8%にも上り、まだまだがん治療と仕事の両立のハードルの高さがうかがえます。

がんは見つかるタイミングや種類によって治療方法や時間が異なるため、適切な両立支援が求められています。がんは医療の発達により、仕事を必ず諦めなければならないものではなくなりました。がんの知識を正しく身に着け、仕事と両立できるようにしましょう。


【目次】
1.がんの種類を知る
2.がんの治療法とは
3.がんを早期発見するには
4.がん治療と仕事を両立させるために企業ができること



1.がんの種類を知る

がんとは正常な細胞の遺伝子が傷つくことでできた異常な細胞が無秩序に増え続けることで発生する病気です。正常な細胞であれば古くなった細胞は新しい細胞に置き換えられていきますが、異常な細胞は際限なく増え続けてしまいます。がんは非常に多くの種類がありますので、ここでは代表的なものをご紹介します。

・固形がん

固形がんには上皮細胞がんと非上皮細胞がんの2つに分けられます。

・上皮細胞がん(大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、肝がんなど)

身体の表面を覆う表皮や内臓の粘膜を構成している「上皮」などを総称した細胞が異常をきたして発生するがんの名称です。固形がんのほとんどは、上皮細胞がんを占めています。

・非上皮細胞がん(骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫など)

筋肉や内臓の内側に存在する内臓の壁の内側にある平滑筋に発生するがんで、いわゆる肉腫のことを指します。

・血液がん(白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など)

血液がんは血管や骨髄、リンパ節内にある細胞に発生するがんのことを指します。固形がんとは異なり、がん細胞が固まりを作るのではなく血液の中に個別で存在しています。

2.がんの治療法とは?

がんの治療法は、がんの状態によって異なります。まずは担当医の問診後、診断や検査も受け、その結果を元に治療法を模索していきます。がんの進行度はステージ(病期)で示され、判断されるステージと年齢や体調などを総合的に判断した上で、治療法を選択することになります。エビデンスに基づいた視点で現時点で用いることのできる最良の治療のことを標準治療と言います。医師が進める治療法は、標準治療に基づいて患者一人一人に最適化した治療を選択します。

では、代表的な3つの治療法を見ていきましょう。

・手術療法(外科療法)

外科手術をして、がんの病巣を切除する治療法となります。身体の負担は大きく、内臓を大きく切除する場合もあるため身体の負担は大きいとされています。生活自体が大きく変わるケースもあります。

医療の発達により、切除範囲を最小限にする縮小手術や腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術といった身体の負担を減らす手術もあります。

・放射線療法

がんに放射線を照射し、がん細胞にダメージを与える治療法です。がん細胞は正常な細胞と比較すると放射線の影響を受けやすいため、一定の線量を何回かに分けて細かく照射することで、正常な細胞への影響を最小限にした上でがん細胞を減らしていきます。

・化学療法(抗がん剤治療)

抗がん剤などの化学物質を用いてがん細胞の分裂を抑制する治療法です。がん細胞の成長速度を遅らせることや、転移や再発を防ぎながら治療するために使用されます。手術治療や放射線治療は、がん細胞への局所的な治療になりますが、抗がん剤は広範囲のがん治療に適応されます。

手術療法/放射線療法/化学療法の3つを組み合わせた集学的治療も用いられることがあります。

3.がんを早期発見するには

がんはステージⅠの段階で発見することができれば、生存率は非常に高まります。全国がんセンター協議会が公表している「10年相対生存率」によれば、ステージⅠで見つかれば多くのがんで生存率が高い状態となっています。反対にステージⅢやステージⅣでの発見となってしまうと生存率は大きく下がってしまいます。

部位別・病期別10年相対生存率(%)

種類 Ⅰ期 Ⅱ期 Ⅲ期 Ⅳ期
胃がん 90.3 57.0 37.2 5.8
大腸がん 94.8 83.0 76.2 13.8
肺がん 67.6 34.5 13.1 2.1
乳がん 98.3 88.7 66.6 18.5
子宮頸がん 88.8 68.0 51.7 19.6

(全がん協部位別臨床病期別10年相対生存率[2005-2008年診断症例]をもとに作成)

がんは早期発見をすることが肝心なのが分かっていただけたかと思います。2021年には国が出している「がん予防重点教育及びがん検診実施のための指針」が改正されました。指針で定められているがん検診の内容は胃がん検診/子宮頸がん検診/肺がん検診/乳がん検診/大腸がん検診の5種類あります。これらのがんは決められた対象者に決められた間隔で検診を行うことで死亡率を減少させることができるといった科学的根拠を元にしています。がん検診は非常に重要なものなのです。

がん検診は各市区町村で推奨されているものの、受診率が低いのが課題となっています。受診率向上のため、がん検診は短い時間で受けられる内容になっていますし市区町村で受診費用のクーポンを出しています。受診する側のハードルが極力低くなっているので、自治体のホームページなどをご確認いただくと良いでしょう。

4.がん治療と仕事を両立させるために企業ができること

企業の側としては、がんになった従業員が離職してしまうことで、対象者のスキルや知識が失われ、マイナスな状況に陥りやすくなります。がん治療はお金もかかりますし、従業員が仕事をしながらがんの治療も両立させたいというケースは少なくありません。突然の『がんの治療のために退職します』は防げますので、しっかりと準備をしておくことが求められます。

まずは、がん患者が治療と仕事を両立しやすい環境を整備することから手を付けて行きましょう。抑えておくべきポイントについては以下の通りです。

・安全と健康の確保

治療をしながら仕事をしていると疾病が悪化することや、体調不良による労働災害が生じやすくなります。これらを防ぐために、治療中は就業場所の変更や作業の転換、労働時間の短縮といった配慮をする必要があります。

・労働者本人の取り組み

前提として、主治医の指示に基づき通院、治療を受ける、服薬することを、生活習慣の改善などに取り組んでいただけるようにしましょう。

・労働者本人の申出及び周知活動

体制を整えていても、労働者側から申し出がない限り支援を開始することはできません。申し出が円滑に行われるように事業場内ルールや相談窓口の設置、個人情報取り使い方法の明確化など、申し出が行いやすい環境を整備した上で従業員に相談窓口や両立支援の取り組みを周知してもらうことが肝心です。

・治療の特徴を踏まえて仕事をする

治療をしている間は入院や通院などで休みを取得したり、薬の副作用などで体調を崩してしまったり、業務遂行能力の低下するといったことが起こりえます。労働者の健康状態や業務遂行能力も踏まえた就業上の措置を取る必要があります。

・個別の事例に応じた配慮

個人ごとに症状や治療方法は異なるため、すべてがマニュアル通りにいくということはありません。個別事例の特性に応じた配慮を行うようにしましょう。

・対象者、対応方法を明確に

業務内容や事業所の状況に応じてルールを労使の理解を得た上で策定するようにしましょう。

・個人情報の保護

対象者の治療状況や症状は個人情報ですので、事業者は本人の同意なく取得してはいけません。

・支援側の関係者同士の連携

対象者も含め、両立支援には多くの方が関わります。産業保健スタッフ、医療関係者、地域の支援機関などが双方に情報交換をしながら治療と仕事を両立させていく必要が有るのです。また、両立支援の関係者間の連携をスムーズにさせるために両立支援コーディネーターという資格も存在します。こちらの資格を取得する際には両立支援の教育からがん経験者の講話までを聞くことができますので、活用いただくのが良いでしょう。



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近年浸透してきた”ニューノーマル”という言葉がありますが、非対面での営業や、在宅勤務の活用などの新しい働き方が定着し、現場では様々な対応を求められています。これらの場所や時間の制約を緩和する働き方は、両立支援を必要とする多様な働き手に取ってもメリットがあり、ダイバーシティ推進の観点からも重要な取り組みです。
多様な人材の活躍のためにも欠かせないのが、仕事との両立支援です。介護をはじめ、私傷病、産休育休などによる休業をした従業員の管理やコミュニケーションにお悩みの方は是非ご覧ください。






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