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EAPカウンセラーが面談のポイントを解説~基本からリスクアセスメントまでご紹介

メンタルヘルス不調者への対応に不安を感じる産業保健スタッフは多いのではないでしょうか。
相手の立場に寄り添いながら適切な対応をするには、面談の基本スキルやリスクアセスメントの知識が欠かせません。本記事では、心理の専門家であるEAPカウンセラーが、基本となる面談の進め方、さらには自殺や他害リスクへの対応について詳しく解説します。
現場で役立つ実践的なポイントについて学びを深めていきましょう。



【目次】
1.基本となる面談対応ポイント
2.メンタルヘルス不調者へのカウンセリング


1.基本となる面談対応ポイント

EAPカウンセラーの役割

アドバンテッジリスクマネジメントでは、認知行動療法的アプローチをベースとして、基本的には短期問題解決型のカウンセリングを実施しています。企業契約を結んでいる企業・組織の従業員のメンタルヘルスケアとして、従業員の精神的な不調や身体的な不調のケア、ストレスや不調感を軽減するための支援を行います。メンタルヘルス不調といったダウンサイドだけではなく、個人の問題を解決することで、仕事の生産性を向上するというアップサイドのご支援もいたします。

面談のポイント

面談の基本


傾聴には、言語、非言語のコミュニケーションがありますが「耳を傾けて聴いていますよ」という姿勢が大切です。大事なことは「あなたに興味があって、あなたの話を聞かせていただきます」という雰囲気であると考えています。

  • 枠組みの設定
    様々な相談者がいらっしゃいますが、私の立場は「ご相談者様の状況を理解して、一緒に考える立場です」ということをお伝えしています。

  • 診断はしない、アドバイスはするが、指示はしない
    なるべく指示的にならないように、どうしたらいいのかを一緒に考えるような姿勢を保ちます。1人1人、カスタマイズしながらご相談を受けることが大切です。

  • 守秘義務~例外の説明
    初回面談では、必ず守秘義務の説明をします。「お話いただくことは、決して外部に漏れることはない」ので安心いただきたい点と、「もし命に危険があるような場合は、例外になります」という点をお伝えします。

  • ゴールの設定
    ゴール設定についても、予めお話し「ここでは問題解決を目指すんだ」という意識を持っていただきます。

面談記録のポイント

面接記録を記載する際のポイントは下記のとおりです。

  • S(subjective data):Cl.の会話内容などの主観的な情報
  • O(objective data):Cl.の精神症状や行動などの客観的な情報
  • A(assessment):生じている問題に対するCo.の分析、見立て、評価
  • I(intervention):Co.の介入
  • P(plan):Cl.に対するカウンセリング計画

※ CI:クライアント、Co:カウンセラー

対象者に何を聞く?

面談の際に、対象者の方に聞く内容は、主訴や、どうしてカウンセリングに来てくださったか、というところから聞いていきます。

  • 周辺情報:いつから、その頻度やその深さ
  • 過去情報:そのことが起こる以前は、どのような生活を送っていたのか
  • 対処方法(コーピングスキル):同じような困ったことが以前起きたことがあるのか、その場合に、どのように乗り超えてきたのか

本人の持つ能力を尊重し「こんなことが出来ているのですね」「これが出来るのだったらこちらも出来るのではないですか」という形で、個人のやる気を引き出し、期待を込めるようにします。また、カウンセラーは心理の専門家ですが、専門外のご相談いただくこともあります。そのような際は、適切な専門家に紹介をすることも大切です。



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2.メンタルヘルス不調者へのカウンセリング

メンタルヘルス不調に関するカウンセリングの場合「気分が落ち込んでやる気が出ない」といったご相談をいただくことがあります。その際の対応のポイントを解説していきます。

相談者にとっての意味を想像し、理解する

困っていることを感じ取らなければならない、というようなプレッシャーを感じたり、聞き返すことが難しい時もあるかと思いますが、深掘りをしながら、様々な角度から、話を聞いていきます。色々な情報をいただくので、ジグソーパズルのピースを一緒に集めているような感覚に似ていると思っております。

気分が落ち込んでやる気がでない

相談者の視点に立つ

「どうしたらいいんでしょう」という質問をよく受けることがあります。自分のことは自分が1番よく分かると思うので「どんな風な考え方を持てればこの状況を乗り切れそうな気持ちになりますか」というように、相談者の視点でどんな考えがあるのかということを聞いていきます。

自殺・他害のリスクアセスメント

最後に、カウンセリングの対象者の発言で、気をつけた方が良いことについてお伝えします。

【 自殺リスクのアセスメント】
やはり、希死念慮や自殺念慮の発言は非常にリスクが高いと思っています。
例えば、「もうずっと死ぬことを考えています」「自殺のためにこんなものを用意しています」という発言です。このような場面では、しっかり状況の確認をしています。

  • どんな方法を考えているのか
  • 今どこにいるのか
  • ここ最近、1か月間にどのくらいそのことを考えていたのか
  • 過去にも自殺を試みたことがあるのか

安全確保から今後の対応まで考え、確認をしながらヒアリングをします。高リスクの場合は、守秘義務を解除して、介入します。

【 他害リスクのアセスメント】
他害の場合、情報開示をすることが、本人にとってメリットがないことがあります。例えば「誰でもいいから殺したい」という発言を、企業に伝える場合です。本人のデメリットが大きいと言えるので、ここは慎重に判断します。ただし、本人や周囲が危険な場合は、危険度が非常に高いので、本人の同意を取り付けて、開示をするようにしています。

他者を傷つけるような行為は、メンタル不調が原因の場合がとても多く、医療機関につなぐことが非常に大事です。カウンセラー同士で共有しながら、フォローアップしていく形をとっています。


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情報提供者


中野 亜結(公認心理師/臨床心理士/産業カウンセラー)

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント所属

EAPの経験年数は14年。これまでに1200名を超える従業員のカウンセリングを実施。
小学校のスクールカウンセラーやパニック障害専門機関のカウンセラーとしても従事。




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