ポジティブ心理学を実践するための知識~心の要素と働きの仕組みについて解説
出来事に対する見方や捉え方により、行動に変化が起こります。
ポジティブ心理学は、そのための知識や情報を提供してくれます。心の要素と働き、またその仕組みはどのようになっているでしょうか。
今回は、ポジティブ心理学を実践するための知識について学んでいきましょう。
※本記事は2023年2月22日に実施された勉強会について、次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。
▶④ポジティブ心理学を実践するための知識【ポジティブ心理学勉強会】
【目次】
1.幸福度と健康状態は相関関係にある
2.ポジティブ心理学を通して出来事の捉え方を変える
1.幸福度と健康状態は相関関係にある
はじめに、1つの研究をご紹介します。イギリスの公務員の人たちを対象にカントリル(Handley Cantril)という経済学者が、幸福度をどのようにして測るか、ハシゴを用いて研究をしました。
ハシゴの各段には1から10まで数字が振ってあります。
一番上が幸せだと感じる人、一番下が不幸せだと感じる人とした場合、自分はどのあたりにいるのかを主観的に答えてもらい、その人達の健康度がどうであるかを調べたものです。
このハシゴの下の方、つまり9や10の人たちにおいて、不健康だと感じる人の割合が約半数ぐらいおり、非常に高くなります。幸福度の程度によって、不健康度の違い、そして主観的な違いがあり、自分が幸せだと感じる人は不健康だと答える人の割合が非常に少ないという結果になりました。幸福度というものが健康に関係するという疫学的なデータです。
では、なぜこのようにポジティブな自分を幸せだと感じる人が健康度が高くなるのでしょうか。
2.ポジティブ心理学を通して出来事の捉え方を変える
私たちの心というものは、ものを見たり、聞いたり、考えたりという認知の部分があります。喜怒哀楽と呼ばれている感情という側面、そして、そういうものを受けて行動を起こす、あるいは言語化するという生理的な反応も含みます。
心はこのような要素から成り立ち、それを司令塔のように統括し、ものの見方、考え方、そして行動の起こし方、それを決めているのが自分という性格、これが心理学が考える心の働きです。
ポジティブな心というのは、自分と他者、あるいは社会と上手に関われるようになれることです。
逆に自分が非常にネガティブに思っていると、関わりを避けてみたりあるいは相手のネガティブなところを見つけて、自分をより良く見せようという防衛的な心理も働きます。
自分が満足していれば、幸福で心身の健康に満ちた人生というものが可能になるという心の働きがわかります。
出来事の解釈は一つでありません。今日仕事がうまくいかなかったというようなエピソードが起きたときに、そのエピソードをどんな風に解釈あるいは自分の中で納得するかということを大切にすることを認知行動療法といいます。今日うまくいかなかった、だから明日もうまくいかないだろうとそんな風に思うのも一つの解釈です。逆に、上手くいかなかったから、だから明日はうまくいくはずだとそんな風に考えることも自由です。
あまり自分が苦しまないように、あるいは今日うまくいかなかったことを引きずらないように、問題に対する対応の仕方は、多様だということに気づくことが大切です。
落ち込まない気分や、引きこもらないで済むような積極的な行動をとることによって、適応力を高めていくためにはどうしたらいいか、視野を広げた柔軟な発想を試してみることが重要です。
出来事に対する見方や捉え方、それによって行動に変化が起こります。前向きな気持ちになるというポジティブな心の機能があるということに気付いてほしいです。ポジティブ心理学というのは、そのための知識や情報を提供してくれます。
次の記事では、ポジティブ心理学に関する研究について具体的にご紹介します。
是非ご覧ください。
▶記事を読む ポジティブ心理学に関する研究 ~楽観主義者と悲観主義者の違い、基礎的な研究について紹介
講師
津田彰 先生(公認心理師、臨床心理士、医学博士)
【プロフィール】
健康・医療心理学、産業・組織心理学、ポジティブ心理学などをご専門とされています。
心理学に関して数多くの著書を執筆、ご講演・論文の発表もされており、多くの賞を受賞されています。
2021年4月 久留米大学 名誉教授
2021年4月 帝京科学大学 医療科学研究科 教授(現在に至る)
2022年4月 久留米大学 医学部 客員教授 (久留米大学)