過重労働と長時間労働~最低限知っておきたい知識~
過重労働・長時間労働は、労働者の健康被害の原因となることがわかっています。そのため、これらの対策は法令による規定も定められています。過重労働・長時間労働対策は、産業保健活動において最も重要な活動のひとつであり、これらの法令や制度についての知識は必要です。
本記事では、過重労働と長時間労働について説明します。
1.過重労働とは
過重労働とは、法令などで明確に定義されている言葉ではありませんが、「長時間による労働(長時間労働)」や「身体的・精神的に負担の大きい労働」を指します。
過重労働は、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには、脳・心臓疾患、精神疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られています。労働者の健康管理という観点からも、企業のリスク管理という観点からも、過重労働対策は、産業保健活動において最も重要な活動のひとつです。
過重労働による健康障害を防止するための対策として、事業者には講ずべき措置として4つの項目(時間外・休日労働の削減、年次有給休暇の取得、労働時間等の設定の改善、労働者の健康管理に係る措置の徹底)について定められています。
2.長時間労働とは
長時間労働とは、「長時間による労働」のことを言います。つまり、長時間労働は過重労働に含まれます。
時間外・休日労働が長くなればなるほど、脳・心疾患などの健康障害のリスクは高まることがわかっています。
また、休養や睡眠の時間が取りづらくなることから、さらに疲労が蓄積されるため、精神疾患、生活習慣病等のリスクも高まります。
労働時間に関する規定
労働基準法では、労働時間は原則1日8時間、1週間40時間までと定められています。これを法定労働時間と言います(ただし、一部例外が設けられている場合もあります)。この法定労働時間を超えて労働をさせた場合が、労働基準法の時間外労働です。
使用者は、36協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合に限り、労働者に時間外・休日労働をさせることができます。原則として、月45時間、年間360時間が上限とされています。
長時間労働者に対する面接指導
事業者は、労働安全衛生法に基づき、長時間の時間外労働を行った労働者に対して、医師による面接指導を行うことが義務付けられています。産業医が選任されている事業場では、産業医が実施することが望まれます。
医師による面接指導の流れを下記に示します。
法令で定められた面接指導対象者は下記です。
基準の設定や、実施方法は、法令に定められた内容を遵守したうえで、事業場の実情に合わせて実施することが重要です。
また、事業場で設けた基準を満たす労働者にチェックリストを送付したり、産業看護職が対象者に面談を実施し、本人が希望した場合や産業看護職が必要と判断した場合に産業医面談を実施するなど、事業場の実情に合わせた取り組みが求められます。
3.まとめ
過重労働は、労働者の健康被害を招くとともに、企業にとってもリスクが大きいため、産業保健活動において非常に重要です。
長時間労働と過重労働という用語について、同じように使用される場面もありますが、意味は異なります。
産業保健スタッフも、関連する法令に対する理解や、事業場内の労働者に対してどのような労働時間の管理が行われているか把握することは必要です。これらの用語についての知識を深め、事業場の実情に応じた対策が求められます。