さんぽLAB

記事

情報機器作業による健康障害~心身の疲労を防ぐためにできること

日常業務において、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの情報機器を使用する時間が年々増加する中、多くの人がその影響による疲労や不調を感じています。情報機器作業は、便利さをもたらす一方で、長時間の使用による肩こりや腰痛、眼精疲労、さらには精神的なストレスなど、心身に大きな負担をかけやすい側面もあります。
今回は、情報機器作業に関連する健康リスクや心身への影響、予防対策についてご紹介します。

目次

1.情報機器作業とは
2.情報機器作業による心身への影響
3.情報機器作業による健康障害の原因
4.予防対策のポイント
5.まとめ


1. 情報機器作業とは


情報機器作業」とは、パソコンやタブレット端末等の情報機器を使用して、データの入力・検索・照合等、文章・画像等の作成・編集・修正等、プログラミング、監視等を行う作業のことを言います。

これまでに、VDT症候群、情報機器症候群といったワードを聞いたことがあるかもしれません。「情報機器作業」という言葉は、以前は「VDT作業」とも呼ばれていました。「VDT」とは、Visual Display Terminalsの略で、ディスプレイやキーボードなどからなるコンピュータの出力装置を指します。しかし、VDTという用語はあまり一般には知られていないことや、多様な情報機器が業務上で使用されることから、今では「情報機器」という表現に置き換えられています。

情報機器作業では、視覚の集中を要するだけでなく、キーボード入力やマウス操作といった反復動作が多いため、長時間にわたる作業で身体的・精神的な負担が蓄積しやすい特徴があります。
特にオフィスワークでは、座りっぱなしの姿勢が続くことで肩や腰に負担がかかりやすく、その影響が明らかになっています。また、近年ではリモートワークが増加し、情報機器を使用する時間も増加傾向にあり、長時間使用による健康リスクが懸念されています。



2.情報機器作業による心身への影響


情報機器作業は、身体的・精神的なさまざまな影響を引き起こすことが分かっています。具体的には、以下のような健康影響が挙げられます。

  • 身体的影響
    長時間の座位姿勢により、肩こりや腰痛、眼精疲労が引き起こされやすく、手首や肘の痛みなども発生しやすくなります。姿勢が固定化されやすいため、血流が悪化し、筋肉のこわばりが進行することで、不快感や痛みが蓄積されることがあります。

  • 精神的影響
    情報過多や常に集中を求められる状況が続くと、精神的疲労やストレスが蓄積しやすくなります。これにより、集中力の低下や不安感、イライラ感が増し、不眠や気分障害につながることもあります。特に、リモートワークなどで職場と家庭の区別がつかなくなると、精神的なリフレッシュができない状況に陥りやすいことが課題です。

    情報機器作業による心身への影響



3.情報機器作業による健康障害の原因


情報機器作業による健康障害の原因には、次のような要因が挙げられます。

  • 長時間の同一姿勢
    情報機器を操作する際、同じ姿勢で画面を凝視し続けることが多いため、特定の筋肉や関節に過度の負担がかかりやすくなります。これにより、筋肉の疲労が蓄積します。

  • 不適切な作業環境
    机や椅子の高さが合っていない、ディスプレイの明るさや位置が適切でない場合、悪い姿勢が習慣化しやすく、身体へ過度な負担がかかりやすくなります。ディスプレイの位置が低すぎる、照明が画面に反射する際には、姿勢が崩れやすく、首や背中に緊張が生じ、肩や腰の負担が増す傾向にあります。

  • 視覚的ストレス
    デジタル画面の光や小さな文字を長時間見ることは、目の疲労を引き起こしやすく、眼精疲労や視力低下につながる恐れがあります。特に、ブルーライトを多く含む画面は視覚的な負担が大きく、目の健康へのリスクを高める要因となります。

  • 精神的負担
    情報機器を使う業務では、複数のタスクを同時にこなすことが多く、心理的な負担がかかりやすい傾向があります。限られた時間内で大量の情報を処理する必要あるため、精神的負荷が増し、ストレスが蓄積したり、集中力の低下につながります。



4.予防対策のポイント


情報機器作業による健康障害を予防するため、以下のポイントを踏まえた対策が重要です。
情報機器を使用して行う作業の労働衛生管理については、厚生労働省は、昨今の情報機器の技術革新を踏まえ「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しています。(令和3年12月1日一部改正)

ガイドラインでは、事務所において行われる情報機器作業を対象として、作業環境管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育、配慮事項等について定めています。特に、情報機器作業の健康障害は、作業時間と拘束性に強く依存すると言われています。ガイドラインの「作業管理」に挙げられた対策を優先的に実施することが推奨されています。

作業環境管理

作業者の心身の負担を軽減し、作業者が支障なく作業を行うことができるよう、照明・採光、情報機器の選択、騒音の低減措置等を実施します。

作業管理

作業者が心身の負担を少なく作業ができるよう、適正な作業時間の管理、個々の作業者の特性に十分配慮した無理のない業務量となるようにします。また、自然で無理のない姿勢で情報機器作業を行ってもらうため、作業しやすい適切な椅子や作業台の使用等、総合的に調整をします。

健康管理

情報機器作業による健康障害を予防のため、ガイドラインにおいて作業時間や作業内容に、相当程度拘束性がある者に対しては、情報機器作業健康診断の実施が努力義務として規定されています。産業医等の意見を踏まえ、必要に応じて保健指導等の適切な措置を講じ、作業方法、作業環境等の改善を図ります。
また、情報機器作業に伴う健康相談の機会を設けるよう努めます。 就業の前後又は就業中に、体操、ストレッチ、リラクゼーション、軽い運動等を行うことが望ましいため、啓発活動を行います。

安全衛生教育

情報機器作業に従事する作業者やその管理者に対して、労働衛生教育を実施します。また、新たに情報機器作業に従事する作業者には、その作業に必要なスキルを習得するための訓練を行います。

配慮事項

  • 高齢者に対する配慮事項
    高齢者には、見やすい文字サイズや照度が必要です。また、個々の視力に合わせた矯正(眼鏡)や、見やすい表示条件の調整が望ましいです。全体照明とは別に、作業用照明を用いることで、適切な照度を提供できます。さらに、作業時間や密度、教育・訓練も高齢者に適した配慮が求められます。

  • 障害を有する作業者に対する配慮事項
    視力や筋力に障害がある場合でも作業ができるよう、支援機器や適切な作業環境・作業管理を整えることが望ましいです。

  • テレワークを行う労働者に対する配慮事項
    テレワークにおいても労働安全衛生法の適用があり、健康確保の措置が必要です。自宅での作業など、事業者が提供する場所以外でのテレワークの場合は、事務所衛生基準と同等の環境を整えることが推奨されます。



5.まとめ


情報機器作業による健康障害は、デジタルデバイスが普及した現代において避けられない課題となっています。適切な予防策を実施することで、そのリスクを抑え、心身の健康を保つことが求められています。また、情報機器作業を行う業務を提供する企業だけでなく、業務にあたる従業員一人ひとりがそのリスクと予防の重要性を理解することが重要です。

積極的に予防策を実践することで、従業員が快適に働ける環境づくりをサポートし、健康的なワークライフバランスを目指していきましょう。産業保健スタッフは、日常的な啓発活動や職場環境の改善提案を通じて、従業員の健康維持を支援する役割を担っていくことが大切です。



■執筆:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■参考資料
厚生労働省|情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン
厚生労働省|職場のあんぜんサイト_情報機器作業


■一緒に見たいコンテンツ


情報機器症候群とは。PC作業の疲れを防ぐために​できること【VDT】 「事務所環境管理」チェックリスト/解説記事/手順書 リーフレット【腰痛】


お役立ちサービス



コメントする