産業保健スタッフが押さえるべき「リテンションマネジメント」とは?離職防止と職場定着に必要な視点
企業の人材確保がますます困難になる中、産業保健スタッフにも求められるのが「リテンションマネジメント」への理解と関与です。本記事では、リテンションマネジメントの基本概念と日本の現状、必要とされる背景、実施におけるメリット・デメリット、そして成功のポイントを解説。従業員の定着や職場環境づくりに関わる産業保健スタッフが知っておきたい実践知をご紹介します。
1. リテンションマネジメントとは何か?
リテンションマネジメントとは、「優秀な人材の離職を防ぎ、その能力を職場で最大限発揮できる状態をつくる人事施策」を指します。「人材の維持・定着」を意味するリテンションは、採用後の定着支援において重要な役割を果たします。
厚生労働省の統計によれば、日本の離職率は15%前後で推移しており、新卒者の3年以内の離職率も30%超と高止まりしています。一方で、7割以上の企業が若手社員の定着支援に取り組んでおり、採用コストの上昇や即戦力人材の確保難が背景にあります。
2. リテンションマネジメントが必要とされる2つの理由
労働人口の減少と人材確保競争の激化
少子高齢化により労働人口が減少する中、大卒求人倍率は回復傾向にあり、中途採用市場でも求職者優位が続いています。優秀な人材を新たに確保するのが難しい現状では、まず既存の人材を定着させる戦略が欠かせません。
■労働者の価値観の多様化
Z世代を中心に「自分らしい働き方」や「社会貢献」を重視する傾向が強まっています。給与や福利厚生だけで引き留めることは難しく、企業には「働きがい」や「成長の実感」を提供する環境づくりが求められています。
3. リテンションマネジメントのメリット
■エンゲージメントの向上
従業員が「この職場で働きたい」と感じる環境を整えることで、会社への愛着やモチベーションが向上します。結果として離職率が下がり、チームワークや組織の一体感も強化されます。
■生産性と競争力の強化
ノウハウの社内蓄積や業務の円滑な遂行により、生産性が高まり、組織全体の競争力も強化されます。
■企業イメージの向上と採用力の強化
人材が定着している企業は外部からも「良い職場」と見なされ、求職者への訴求力が高まります。ステークホルダーや顧客に対する信頼醸成にもつながります。
■採用・教育コストの削減
定着率が向上すれば、欠員補充のための突発的な採用や教育にかかるコストを抑えることができ、経営面でもメリットがあります。
4. リテンションマネジメントのデメリットと注意点
■導入コストと環境整備の負担
職場環境改善やITツールの導入、福利厚生の拡充などには初期コストがかかります。
■中長期的な取り組みが必要
短期での成果が出にくいため、継続的なフォローと組織全体での意識改革が必要です。
5. 産業保健スタッフが担う役割とは?
産業保健スタッフは、職場環境の整備やメンタルヘルス支援を通じて、リテンションマネジメントに直接関与する立場にあります。以下のような取り組みが効果的です。
- 定期的なストレスチェックの活用
- 働き方や配置に関する相談対応
- エンゲージメントを高める職場改善提案
- 離職リスクが高い従業員の早期キャッチと対応
産業保健スタッフとして、単なる健康管理にとどまらず、人材定着という視点で職場に関わることが、今後ますます重要となっていくでしょう。
出典
アドバンテッジJOURNAL
リテンションマネジメントとは?離職防止に有効な取り組み事例を解説
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