試し出勤制度を導入する際の注意点~復職支援を円滑にするために~
試し出勤制度は、リハビリ出社とも呼ばれ、職場復帰の判断等を目的として設定する場合があります。試し出勤制度は、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」にも挙げられています。
本記事では、試し出勤制度を設ける場合の注意点等について解説します。
【目次】
1.試し出勤制度とは
2.試し出勤制度導入での注意点
3.まとめ
1.試し出勤制度とは
試し出勤制度は、休職中の従業員が職場復帰する前に職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する制度です。リハビリ出社、リハビリ出勤などとも呼ばれます。
休職していた従業員の不安を和らげたり、従業員自身が職場の状況を確認しながら復帰の準備を行えたり、職場側が従業員が就労できる状態か見極めたりすることができます。
試し出勤制度には、下記のような方法があります。
①模擬出勤
勤務時間と同様の時間帯にデイケアやリワークセンターなどで模擬的な軽作業を行ったり、図書館などで時間を過ごす
②通勤訓練
自宅から職場の近くまで通勤経路で移動し、職場付近で一定時間過ごした後に帰宅する
③試し出勤
職場復帰の判断等を目的として、本来の職場などに試験的に一定期間継続して出勤する
2.試し出勤制度導入での注意点
試し出勤制度を導入するにあたっては、処遇や災害が発生した場合の対応などの人事労務上の位置づけについて、労使間で検討し社内ルールを定めておくことが重要です。
また、試し出勤制度の導入に当たっては、労働基準法、労災保険法、健康保険法等に基づいた形での処遇などを明確にし、対象となる従業員にも理解を得る必要があります。
労働基準法、労災保険法
試し出勤を労務上「休職中」とする場合は、労働を免除され、賃金も支給されません。そうなると、通勤途中や、会社施設内で事故や怪我などが発生しても、労災保険が適用されない可能性もあります。
また、仕事ができるかどうか見極めることが目的だとしても、業務を命じた場合は労働とみなされるため、賃金を払う必要があります。業務に従事しながら賃金を支払わないことは、お互いに合意があったとしても労働基準法違反となりますので、注意する必要があります。
健康保険法
休職中、賃金を受け取っていない場合は、健康保険組合より傷病手当金が支給されます。傷病手当金は「労務不能な状態」に支給されるので、短時間のみの勤務の場合や賃金が少ない場合でも、就労しているとみなされた場合は支給されない可能性があります。
傷病手当金の支給については、一律の基準があるわけではなく、健康保険組合(保険者)が判断するので不明な点については問い合わせるとよいでしょう。
3.まとめ
導入や実施の際は、「試し出勤制度」の目的はあくまで職場復帰支援であることを対象者や関係者に改めて説明しておくことが大切です。そのうえで、法律に基づき、ルールを決めてお互いが納得できる形で実施できるよう、体制を整備するようにしましょう。