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「健康経営アドバイザー」とは? 産業保健師が取得するメリットと活かし方【体験談あり】

「健康経営アドバイザー」とは?<br>
産業保健師が取得するメリットと活かし方【体験談あり】<br>
近年、企業の「健康経営」への取り組みが加速する中で、産業保健師としての専門性をさらに高める資格として注目されているのが「健康経営アドバイザー」です。
本記事では、健康経営アドバイザーの概要や取得メリットに加え、実際に資格を取得した産業保健師の体験談をご紹介します。
現場でどのように活かしているのか、またキャリア形成にどのような影響があったのか──実際の声をもとに、資格取得を検討している方にとって参考になる情報をお届けします。


<目次>

1.健康経営アドバイザーとは?
2.産業保健師に求められる新たな役割
3.産業保健師が健康経営アドバイザーを取得するメリット
4.健康経営アドバイザーの資格概要
5.体験談:産業保健職が語る「資格取得のリアル」
6.資格取得を目指す産業保健師へ
7.まとめ


1.健康経営アドバイザーとは?

健康経営アドバイザーとは、健康経営の必要性を伝え、健康経営を行うためのきっかけを作る人材の育成を目的とし、2016年に東京商工会議所が設立した資格です。
健康経営アドバイザー制度には、「健康経営アドバイザー」に加えて2018年には「健康経営エキスパートアドバイザー」が新たに設けられました。健康経営エキスパートアドバイザーは中小企業を主体とし、健康経営の取り組み支援ができる専門家の育成を目的とされています。

さんぽLABが2025年に産業保健職201名を対象に実施したアンケートでは、産業看護職(保健師・看護師)が持っている資格の第2位、今後取りたい資格の第3位に挙げられており、産業保健の現場でも非常に興味関心が高い資格であることが伺えます。

さんぽラーニング健康経営とは?動画

2.産業保健師に求められる新たな役割

近年、労働人口の高齢化や、中小企業による慢性的人手不足、さらには国民医療費の増大といった社会的背景を受け、企業において「健康経営」の重要性が一層高まっています。優秀な人材の確保や離職防止、企業ブランドイメージの向上を目的として、健康経営に取り組む企業が着実に増えています。
こうした中、産業保健師は健康経営を推進する上で欠かせない存在です。個別の保健指導や健康施策の実施に加え、企業全体の健康課題の抽出や分析、経営層への提言など、より戦略的で組織的な役割が求められています。

健康経営の実践では、施策の計画(Plan)から実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)までのPDCAサイクルを継続的に回していくことが重要です。産業保健師は、現場の状況を的確に捉え、実効性のある施策の立案から実行・改善までを主導する、中心的な存在といえるでしょう。
さらに、経済産業省が推進する「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定基準においても、産業医や保健師の関与は必須項目とされており、専門職による健康支援体制の構築が企業の信頼性や対外的な評価にも繋がっています。
今後、産業保健師は、企業における健康経営の中核を担う存在として、ますます重要性を高めていくことが期待されます。


3.産業保健師が健康経営アドバイザーを取得するメリット


実際、健康経営アドバイザーを取得することでどんなメリットがあるのでしょうか。以下に4つご紹介します。

1, 健康経営の基礎知識を体系的に学べる

健康経営における背景や意義、目的、実践の流れなどを網羅的に学ぶことができ、健康施策に関わる際の基礎知識や考え方を身に着けることができます。

2, 企業への信頼性や説得力の材料になる

名刺やプロフィールなどに資格を記載することで、健康経営に関する一定の知識を持つ専門家として認識され、経営層や人事との対話が円滑になります。

3, 転職時に専門性をアピールすることができます。

健康経営に取り組む企業への転職を目指す際には、履歴書や職務経歴書に資格を記載することで、専門性や意欲をアピールする材料になります。

4, 健康経営エキスパートアドバイザーへのステップアップに

より高度で実践的な支援を行いたい方は、「健康経営エキスパートアドバイザー」への挑戦が可能となります。資格取得をきっかけに、継続的なスキルアップを図ることにつながります。


4.健康経営アドバイザーの資格概要

申込サイト

東京商工会議所 健康経営アドバイザー特設ページ

受講料金

8,800円(税込)

認定期間

認定日より2年間有効
※更新には研修の再受講が必要です。有効期限を含む月の月初から更新申し込みが可能です。

教材テキスト

自宅に郵送されます。
健康経営アドバイザー受講の流れ

受講の流れ

  1. 申込
    東京商工会議所 健康経営アドバイザー特設ページ より申込ができます。申込には個人と団体の2種類があり、状況に合わせて選択が可能です。
  2. 支払い
    所定のフォームから申込後、受講料を支払います。
  3. マイページで動画視聴  
    支払い完了後、専用マイページから動画(全11本・約135分)を視聴できます。
  4. 効果測定(オンラインテスト)  
    動画視聴後、効果測定を実施します。 10問中7問以上正解で合格。合格後は認定証をダウンロードできます。  
    ※指定の期間内であれば、何度でも再受験可能です。
  5. 認定証のダウンロード  
    マイページよりダウンロード可能です。

5.体験談:産業保健職が語る「資格取得のリアル」

実際に健康経営アドバイザーを取得した産業保健専門職へ資格取得のリアルを伺いましたので共有いたします。※一部抜粋・修正をしております。

Q1.なぜその資格を取ったのですか?

企業の健康経営の取り組みに役立てたいと考えた
健康診断の担当者になったことがきっかけ
大学院でMBAを専攻し、業務で活かせると思い取得
産業保健の目的や意義を経営層と共有しやすく、共通認識が得られるから
当院の健康経営をはじめ、産業保健において必要と感じたため
健康経営の知識をつけたい。転職になにかしら役立つことを期待して
現在の労働市場と健康に関することを学ぶことができるので

Q2.実際の仕事やキャリアにどのように役立っていますか?

健康経営についての基礎的知識があるので企業様からの質問に対応出来る
取得前に比べて視野が大きくなった気がする
幹部社員などの経営層との面談時に、自身の学んだ内容から組織・企業としての会話を
   行い、健康経営がなぜ労働者に必要とされるのかを話せ、会話に幅がでた
自信をもって施策が説明できる
企業内で従業員の健康管理や職場環境の改善と併せて、健康経営を展開することでチームや
   連帯での共同事業としてさらに深みを増してきたこと
今のところ実感はとくにありません
役立つというよりかは、知識のおさらいという感じです。ただ、データに基づく意見を
   述べることができるので、経営陣には説得力が増します

Q3.今後のキャリアにどう役立つと考えていますか?

保健師の視点からアドバイスが出来る
離職後のキャリアに役立てたい
いずれ副業として活かしたい
これがあるから相談したい、までの需要はない。あくまでも仕事のキャパを広げる一手段
コンサル的要素を高め、関連事業所等への展開等行っていきたい
今後のキャリアに役立てるためには、少なくともエキスパートアドバイザーを取るべき
   だと思いました
独立することになるかと思います

産業保健セミナー


6.資格取得を目指す産業保健師へ

企業において、健康経営を進める専門家として産業保健師には多様な役割が求められるようになりました。こうした背景の中、「健康経営アドバイザー」の資格は効果的に健康施策のPDCAを回していく上で産業保健師にとって大きな武器になるでしょう。

こんな産業保健師にお勧め!

健康経営アドバイザーは、企業の健康経営に一歩踏み込んで関与したい産業保健師にお勧めの資格です。特に、以下のような志向をお持ちの方に向いています。

✓ 個別の健康施策に加え、組織の健康づくりに関わりたい
✓ 経営層などと連携して健康経営を推進したい
✓ 健康経営の基礎知識を学びたい
✓ 健康経営優良法人認定に向けた支援や実務に関わりたい

働く人の健康づくりに「経営的視点」が求められるようになった現在、産業保健師がこの資格を有することは、専門職として信頼性や価値を高め、より広い領域で活躍するための大きな一歩につながります。

職場の理解を得るには

資格取得にあたっては、企業側の理解と支援を得ることが重要です。以下のようなポイントを押さえて職場に説明すると効果的です。

●資格取得のメリットを明示する。

健康経営優良法人認定制度では、産業医や保健師の関与が評価項目として盛り込まれています。健康経営アドバイザーの資格を取得することでその役割をより専門的・実践的に支援することができます。「資格を通じてどのような役割を担うことができるのか」「組織にどのようなメリットがあるのか」等、どのように資格を実務や組織へ活かせるのかを具体的に明示することで企業からの理解が得られやすくなります。

●費用対効果を伝える

資格取得によって期待される成果や、企業への貢献を具体的に伝えることが重要です。たとえば、認定取得の促進や従業員の健康データの数値的な改善(有所見率の低下など)を具体的に明示することで、組織全体の投資として理解してもらいやすくなります。


7.まとめ

健康経営アドバイザーは、企業で健康経営を進めていくなかで信頼性や説得力を高める有効なツールとなります。特に、「何から始めていいか分からない」といった、これから健康経営に取り組んでいきたい企業にとっては、産業保健師などの専門職が具体的な道筋を示す存在となります。制度や施策の説明・提案だけでなく、どのような視点で進めていくかを伝えられると、専門性がより一層広がることでしょう。
経営層や人事労務担当者ともにチームで取り組んでいくためにも、健康経営アドバイザーで得られる知識や視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。


<参考>
東京商工会議所 健康経営アドバイザー特設ページ
健康経営アドバイザー・エキスパートアドバイザー共通テキスト2025-2026

アドバンテッジリスクマネジメント健康経営コンサルティング

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