はじめに
副業・兼業を希望する労働者は増加しており、多くの企業で制度整備が進められています。一方で、人事労務担当者や産業保健スタッフからは「副業を許可したほうがよいのか」「労働時間は通算して考えるのか」「健康管理はどのように考えるのか」といった疑問も少なくありません。
本記事では、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月8日改定版)」に基づき、産業保健における副業・兼業に関する実務上の疑問をFAQ形式で分かりやすく整理しました。
目次
1. 副業・兼業の基本的な考え方
Q1. 副業・兼業とは何ですか?
A. 二つ以上の仕事を掛け持つ働き方をいいます。
副業・兼業には、他社でのアルバイトやパート、会社役員、フリーランス活動、起業など、さまざまな形態があります。働き方の多様化に伴い、副業・兼業を希望する労働者は増加傾向にあります。
Q2. 企業は副業・兼業を認めなければなりませんか?
A. ガイドラインでは「原則として認める方向」が望ましいとされています。
副業・兼業に関する裁判例では、労働時間外の過ごし方は基本的に労働者の自由とされています。そのため、企業は副業・兼業を一律に禁止するのではなく、必要性を十分に検討することが求められています。
Q3. 企業が副業・兼業を禁止できるのはどのような場合ですか?
A. 例として、下記のようなケースが考えられます。
- 労務提供に支障がある場合
- 業務上の秘密情報を漏えいするおそれがある場合
- 競業により企業利益が損なわれる場合
- 企業の信用や名誉を損なう場合
これらに該当する場合には、副業・兼業を制限できるとされています。
2. 労働時間管理のポイント
Q4. 副業先の労働時間も通算する必要がありますか?
A. 労働基準法上、労働時間規制が適用される労働者として複数の事業場で働く場合は、原則として労働時間を通算します。事業主が異なる場合であっても、原則として労働時間は通算されます。
例えば、本業で1日8時間勤務し、副業先でさらに3時間勤務する場合、合計11時間として取り扱われます。
Q5. フリーランスの副業も通算対象ですか?
A. 原則として、対象外です。
フリーランスや個人事業主として働く場合は、通常、労働基準法上の労働者に該当しないため、労働時間の通算対象とはなりません。
ただし、健康確保の観点から、就業時間を把握することが望ましい、とされています。
Q6. 副業の有無はどのように確認すべきですか?
A. 労働者からの申告等によって確認することが考えられます。
企業は、労働時間管理や健康管理を適切に行うため、就業規則や労働契約で副業・兼業に関する届出制度を定め、その有無や内容を確認できる仕組みを整備しておくことが望ましいとされています。
Q7. 労働者から確認すべき事項は何ですか?
A. まず、副業・兼業先の事業内容、従事する業務内容、労働時間通算の対象となる働き方かどうかを確認します。労働時間通算の対象となる場合は、次の事項についても確認することが望ましいとされています。
- 労働契約期間
- 所定労働日、所定労働時間、始業・終業時刻
- 所定外労働の有無、時間数
- 実労働時間等の報告方法
- これらの情報を確認・更新する頻度
3. 健康管理・産業保健活動
Q8. 副業・兼業者に対する健康管理は誰が行いますか?
A. それぞれの使用者が、自らの事業場において必要な健康確保措置を講じます。
副業・兼業を行う労働者を雇用している全ての使用者には、安全配慮義務があります。
そのため、自らの事業場も副業・兼業先も、それぞれの立場で労働者の健康確保に配慮する必要があります。
Q9. 副業・兼業者にも健康診断の実施は必要ですか?
A. 対象要件を満たす場合は必要です。
労働安全衛生法に基づく健康診断やストレスチェック、長時間労働者に対する面接指導等については、それぞれの制度で定められた対象要件に応じて、各使用者が適切に実施する必要があります。
Q10. 企業が実施できる健康確保策には何がありますか?
A. 労使で十分に話し合いながら、次のような取組を進めることが考えられます。
- 健康相談窓口の設置
- 面談機会の提供
- 時間外労働の抑制
- 休日労働の制限
- 定期的な健康状態の確認
4. 就業規則・届出制度
Q11. 就業規則には何を定めるべきですか?
A. 副業・兼業を原則的に認める旨や、制限する場合の理由を明確にしておくことが重要です。
例えば、
- 原則として副業・兼業を認める
- 届出義務を設ける
- 禁止・制限できるケースを定める
などが考えられます。
Q12. 副業・兼業先の情報を企業が把握することは問題ありませんか?
A. 労務管理や健康管理に必要な範囲で、把握することが考えられます。
ただし、収集目的を明確にし、必要最小限の情報を取得することが望まれます。
5. 副業・兼業に関わるその他の制度について
Q13. 副業・兼業先への移動中に事故が起きた場合、労災になりますか?
A. 自社と副業・兼業先の両方で雇用されている場合、一方の就業先からもう一方の就業先への移動中に起きた災害は、通勤災害として労災保険給付の対象となります。
事業場間の移動は、移動先の事業場で働くための通勤と考えられ、労災保険の手続きは原則として移動先の事業場の保険関係で行われます。
6. 実務チェックリスト
副業・兼業制度を運用する際は、次の項目を確認しましょう。
- 就業規則に副業・兼業規定がある
- 届出制度を整備している
- 労働時間管理の方法を定めている
- 長時間労働を把握できる仕組みがある
- 健康確保措置を実施している
- 健康相談窓口を設置している
- 禁止・制限事由を明確化している
- 労働者へ制度を周知している
まとめ
副業・兼業は、労働者のキャリア形成や企業の人材活用につながる一方で、長時間労働や健康障害のリスクにも配慮する必要があります。
産業保健スタッフ、人事労務担当者、管理職が連携し、労働時間管理と健康管理を適切に行うことが重要です。副業・兼業制度を整備する際には、就業規則や届出制度だけでなく、健康相談体制や産業保健活動も含めて検討しましょう。
出典:厚生労働省|「副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月8日改定版)」を基に作成(2026年9月10日参照)
※本記事は、上記資料を参考に、当社が編集・作成しました。
※本記事の作成にあたり、文章整理にAIを補助的に活用しています。




