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職場復帰支援~法令の側面から在宅勤務制度の活用について考える

在宅勤務制度について、さまざまな企業で職場復帰支援の場で活用されています。ですが、実際の運用については、「在宅勤務のときの復職の判断をどうやって行う?」「復職した後の健康状態の把握をどうしたらいい?」など、悩む場面が多いのではないでしょうか。
在宅勤務制度と職場復帰支援について、法律的、健康管理的、そして実務的な運用の側面から理解を深めていきましょう。
本記事では、法令の側面から在宅勤務を活用できるかどうかについて、ご紹介しています。

※本記事は2022年11月24日に実施された勉強会について、次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。
①法令の側面から在宅勤務を活用できるか考える【職場復帰支援勉強会】



【目次】
1.在宅勤務制度と職場復帰支援
2.法律的側面~職場復帰の可否についての判断
3.健康管理的側面~産業保健スタッフが検討すること



1.在宅勤務制度と職場復帰支援

新型コロナウイルスの影響を受け、在宅勤務制度が急に導入され、様々な企業において職場復帰支援の場面でどのように活用するかという問題が出てきています。最初は、感染対策として在宅勤務を導入したわけですが、今後は、柔軟な働き方の一環として、制度化して今後も運用しようという動きが広がっています。

私たち産業保健専門職としては、病気や怪我で休業している社員の職場復帰の時、また、治療と就労の両立支援の場面で、在宅勤務制度をどう使っていくかを考えなければいけない場面が増えているかと思います。在宅勤務制度には、現状、色々な問題があり、少々頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。
具体的には「職場復帰の可否の判断をどう行えばいいのか」「職場復帰後に、在宅勤務で自宅で勤務されている方の体調管理や勤怠管理をどのように行えばよいのか」などが挙げられ、我々産業保健スタッフとしても、心配に思うところでもあります。

まずは、在宅勤務と職場復帰支援について、法律的な側面から情報を整理していきたいと思います。その次に、健康管理の側面から説明します。
最後に、実際に在宅勤務で職場復帰支援をする、また、在宅勤務制度を使って復職する際にどういった手順で、何に注意して進めていけばいいのかといった実務的な部分を説明していきます。

2.法律的側面~職場復帰の可否についての判断

すでにご存知の方も多いと思いますが、まずは在宅勤務から離れて、一般的な職場復帰の可否についての判断について法律的な解釈を整理したいと思います。

職場復帰の可否についての法律的な基準

法律的には、職場復帰の可否については、雇用契約に定められている本来の業務の労務提供ができるかどうかを基準に判断するのが適当であり、様々な裁判事例からも相場だと言われています。
雇用契約の本来の労務提供というのは、簡単に言うと、休職前に行っていた仕事ができるということですが復職直後に100%できる必要はありません。
最初は業務を軽減していて2~3ヶ月ぐらいすると、元の仕事ができる見込みだったらOKというのが法律的な考え方となります。例えば、何等かの事情で体調が悪く、業務を半分に減らしてた場合は、その半分の仕事ができるから復職とするのではなく、本来の業務量を基準に判断するのが妥当とされています。
また、休職前と全く同じでなければいけないということではなく、雇用契約の範囲内で、異動や配置転換などの業務の種類の変更が可能であれば、検討を行って最終的には会社が判断する、というのが、一般的な職場復帰の考え方となります。

Q: 法律的には、会社は復職の時に在宅勤務を行う必要があるのか?

職場復帰における在宅勤務の運用

ここでは、在宅勤務の制度について、法律的に何か縛りがあるのかについて整理していきます。
現状では、基本的に職場復帰の際に在宅勤務制度を使うかどうかというのは、企業が自由に決めていいということで、特に法律的な縛りはありません。しかし、この場合も、在宅勤務制度がその人の雇用契約の範囲に入ってくるかどうかというところが重要になります。
例えば、在宅勤務があくまでも感染対策として、一時的な臨時対応だという位置づけであれば、在宅勤務は本来の雇用契約の範囲には入ってないと解釈し、復職の時に在宅勤務をさせないという判断もあります。
在宅勤務制度があって、すでに職場復帰時に運用されている、または、制度やルールはあまり整備されてないけれど、定常的に在宅勤務が実施されている場合では、在宅勤務の復職について、検討しなければいけないというのが、法律的な一般的な考え方になってきます。

Q: 法律のことはわかったけど、 実際にどう対応すればよいの…?

次に、法律的なことがわかったけれど、実際の運用をどのようにすればよいのかという疑問が残ったままかと思います。法律と実際の運用等に若干の違いがあり、どのように運用するかというところが、現実的な問題になってきます。

実際の対応のイメージ

法令の基準というのは、社員の安全や健康の観点から見ると最低ラインの基準となります。
実際には、「法的な基準」と「完璧に望ましい対応」の間で、現場で実施できる範囲について探っていくというのが、産業保健スタッフが、現場の上司の方や人事担当者の方と一緒に行っている作業になります。

3.健康管理的側面~産業保健スタッフが検討すること

次に、健康管理の側面から在宅勤務と職場復帰支援について整理します。
私たち産業保健スタッフは、在宅勤務制度を使う時に、いくつか検討する項目があります。

産業保健スタッフが検討すること

まず、会社、職場、業務において、在宅勤務制度が利用できるかどうかということを確認しなければいけません。こちらが大事なポイントですが、在宅勤務を行うことで、より安全に勤務ができるか、また、社員の健康状態を損ねたり、病状を悪化させるようなリスクがないかどうかについて、考えなければなりません。
在宅勤務制度には健康状態で様々なメリット、そしてデメリットがありますので、その両方を考えて、決めていくという作業が必要になってきます。

次の記事では、在宅勤務制度を活用した際の長所・短所についてご紹介します。
是非ご覧ください。
▶記事を読む 復職支援において在宅勤務制度を活用した際の長所・短所について




講師


難波克行(産業医, 労働衛生コンサルタント)

アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医

メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信

代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』




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