キャリアに悩む従業員への支援~現場で活かせるキャリア理論やツールをご紹介
産業構造の変化や働き方の多様化に伴い、キャリアの相談を受ける場面が増えています。
産業保健スタッフは、人事担当者や管理監督者とは違った立場にいるため、本音を話しやすい従業員も多いでしょう。
組織の一員として、中立な立場を取ることが求められる産業保健スタッフは、キャリアに悩む従業員の支援として、どのようなことができるでしょうか。今回は、キャリアに悩む従業員への支援についてご紹介します。
【目次】
1.スーパーのキャリア理論
2.キャリア・アンカーとは?
3.「自分を知り、適職を知る」ためのツール
1.スーパーのキャリア理論
人生100年時代、10代後半から70代、幅広い年齢層の従業員が同じ職場で働く時代になりました。それぞれの世代に生じるキャリアの課題を知ることは、支援をする上で重要な視点となります。
産業保健スタッフは、中立の立場となるため「転職した方がよい」などの助言はできませんが、キャリアに悩む従業員が、その考えを整理し、選択することができるよう支援します。
発達段階理論
アメリカの心理学者であり、キャリア開発の権威であるドナルド・E・スーパーは、人々がキャリアを築く過程で経験するライフステージを明確に定義し、その段階ごとに特有の課題や目標を発達段階理論として提唱しています。
彼の理論は、教育や職業指導の分野で広く応用され、個々の人々のキャリア開発や生涯学習を支援するための枠組みとして役立っています。
- 第1のライフステージ:成長期(0~14歳)
- 第2のライフステージ:探索期(15~24歳)
- 第3のライフステージ:確立期(25~44歳)
- 第4のライフステージ:維持期(45~64歳)
- 第5のライフステージ:減退期(65歳以上)
産業保健スタッフは、従業員のライフステージに幅広く関わることができる職種です。
それぞれステージ毎の特徴を捉え、支援に活かしていきましょう。
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2.キャリア・アンカーとは?
キャリア・アンカーとは、1975年に心理学者のエドガー・シャイン博士によって提唱された概念で、仕事の経験を意味する「キャリア」と、船の錨を意味する「アンカー」を組み合わせた言葉です。
キャリア・アンカーは、仕事の条件でこれだけは譲れない、これだけは犠牲にしたくないというような個人がキャリアを選択する際に、もっとも大切にしている欲求や価値観を意味します。外部の環境が変化しても自己の内面で不動なものとされ、個人がキャリアに関して大事にしている根幹的な部分のことを指します。
キャリア・アンカーは自己理解と適切なキャリア選択に不可欠であり、個人の幸福感やキャリアの成長に大きな影響を与える要素です。
キャリアについて悩む場面で、キャリア・アンカーがどこにあるのかを見極め、悩みを抱える従業員が後悔することなく決断をすることができるよう支援する視点が大切です。
キャリア・アンカーの8つの分類
- 専門・職能別能力
- 経営管理能力
- 自律・独立
- 保障・安定
- 起業家的創造性
- 奉仕・社会貢献
- 純粋挑戦
- 生活様式
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3.「自分を知り、適職を知る」ためのツール
キャリア支援をすることは、従業員一人ひとりのパフォーマンスやモチベーションの向上に繋がっています。逆にパフォーマンスやモチベーションが低下している状況が遷延すると、メンタルヘルス不調を引き起こす可能性があります。メンタルヘルスとキャリアは切り離せないとも言われています。
産業保健スタッフには、キャリアに悩む従業員やその組織が、メンタルヘルス不調に陥ることなく、活き活きと働ける環境を整える役割があります。では、一人ひとりが活き活きと働く、ということはどのような状況でしょうか。
一人ひとりの従業員が、強みを理解し、組織の中で活かせることが大切です。
キャリア支援をすることで、結果として、メンタルヘルス不調を予防することに繋がります。そのためには「自分を知り、適職を知る」ことが重要です。自律したキャリアを目指すための便利なツールをいくつかご紹介します。
キャリアに関する便利なツール
興味に関する診断テスト
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60問の質問に回答することであなたの仕事に対する「価値観」を知ることができます。ポータブルスキル見える化ツール
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