厚生労働省より令和6年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました
厚生労働省では、過重な仕事が原因で発症した脳・心臓疾患や、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の状況について、労災請求件数や、労災保険給付の支給決定件数などを年1回、取りまとめています。
令和7年6月25日に、厚生労働省より令和6年度「過労死等の労災補償状況」が公表されました。
過重な仕事が原因で脳・心臓疾患を発症し、労災認定されたケースはここ10年で概ね横ばい傾向にありますが、仕事による強いストレスが原因で発病した精神障害の労災認定については6年連続で過去最高となり初めて1000名を超えました。

脳・心臓疾患の労災について
長時間労働などの過重な仕事が原因で脳・心臓疾患を発症したとして申請された令和6年度の労災請求件数は1030件(前年度比+7件)、そのうち支給決定件数は241件(前年度比+25件)といずれも前年度比で増加となりました。
労災認定された件数はここ数年増加傾向に見えますが、平成19年度の392件をピークとして減少傾向に転じ、働き方改革なども相まってここ10年間は概ね横ばい傾向といえます。
出典:過労死等に関する労災・公務災害の補償状況

内訳をみると、性別では男性が圧倒的に多く、年齢別では働き盛りの40~50代、そして高年齢労働者も増えている事から60代も多くなっています。

また、業種別の傾向を見ると、支給決定件数は①「運輸業、郵便業」88件、②「宿泊業、飲食サービス業」28件、③「製造業」24件の順に多くなっています。
さらに、労災認定された中で、脳・心臓疾患の発症前1か月間の時間外労働時間は「100時間以上~120時間未満」18件、2~6か月間における1か月平均は「80時間以上~100時間未満」63件が最も多く、引き続き事業所における長時間労働対策が重要となっています。
精神障害の労災について
仕事上の強いストレスが原因でうつ病などの精神障害を発症したとして申請された令和6年度の労災請求件数は3780件(前年度比+205件)、そのうち支給決定件数は1055件(前年度比+172件)と初めて1000名を超え、中でも未遂を含む自殺件数も88件(前年度比+9件)といずれも増加となりました。


労災と認められた精神障害の原因は以下の通りです。

仕事の量や質といった業務負荷の他、パワハラやカスハラ、セクハラといったハラスメントが多く挙がっています。
詳細はこちらをご確認ください。
出典:厚生労働省 令和6年度「過労死等の労災補償状況」を公表します
社会問題に対応した今後の動き(法改正)
特に精神障害の労災件数が上昇している社会背景も踏まえて、以下のような法改正の動きがあります。
①ハラスメント対策
法改正により2020年6月~職場におけるハラスメント防止対策が強化され、パワハラ防止措置が事業主の義務(※中小企業は2022年4月~)となった他、セクハラや妊娠・出産・育児休業等ハラスメントの防止対策も強化されました。
加えて、2025年6月の法改正によりカスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(就活セクハラ)の防止措置も事業主の義務となります。
参考:職場におけるハラスメントの防止のために
②ストレスチェックの義務化の拡大
これまで従業員50人未満の事業場はストレスチェックが努力義務でしたが、2025年5月の法改正により全ての企業に義務化されることとなりました。
企業の規模に関わらず、従業員のメンタルヘルス不調の予防を実行できる体制づくりが求められています。
参考:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について (報告)
仕事が原因で起こるメンタル不調者の増加、そして精神障害の労災件数の増加は深刻な社会問題です。ハラスメント対策やストレスチェック制度の拡充など、事業者に求められる責務も増えていくでしょう。職場におけるメンタル不調は、従業員の心身の健康や働く意欲を損なうだけでなく、企業の信頼や生産性にも深刻な影響を及ぼします。
誰もが健康で尊重される職場づくりを目指して、メンタルヘルス不調や長時間労働、ハラスメントなどを予防するために必要な措置を講じていきましょう。
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投稿を表示まとめ見やすくありがたいです!
最新版のグラフがある資料を共有化してもらえると嬉しいです。してくれたら誰か新しく声かけて入会を勧めます(笑)
パワハラは認定されにくい印象がありますが、過去からこんな上位にありましたっけ?請求も増えても認定までは増える印象はなかったのですが、認定も明らかに増えてますね!?
どなたか詳しい方の過去からの変化について解説付きの資料を希望します!(2回目)
ご検討のほどよろしくお願いします。