事業主、事業者、使用者の違い~産業保健の基盤となる法令で使用される用語の定義~
産業保健は、労働に関連する法律に基づいて活動することが必要であり、その知識は産業保健スタッフにも必要です。
労働に関連する法律には、「雇う側」を表す用語としていくつかの既定があります。
本記事では、その用語が使用されている法律におけるそれぞれの用語の定義について解説します。
【目次】
1.事業主、事業者、使用者の定義
2.事業主、事業者、使用者の関係性
3.まとめ
1.事業主、事業者、使用者の定義
事業主
事業主とは、労働基準法(労基法)などで用いられている用語ですが、定義は明記されていません。
事業者
事業者とは、主に労働安全衛生法(安衛法)で用いられている用語で、『事業を行う者で、労働者を使用するもの』と定義されています。
安衛法において、事業者という言葉が用いられるようになった背景に、労働者の安全や健康に関する責任(安全配慮義務)が、事業経営の利益の帰属主体(法人や個人事業主)そのものにあるということを明確化するということがあります。
使用者
使用者とは、労働契約法においては、『その使用する労働者に対して、賃金を支払うもの』と定義されています。つまり労基法の「事業主」に相当します。
また、労基法においては、『事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者』と定義されています。
経営の主体や法人そのものに加えて、事業の経営担当者や業務命令を発して指揮監督などを行う者を指します。具体的には、事業主の他、理事、社長、取締役、支配人、工場長、部長、課長などの管理監督者が該当します。
2.事業主、事業者、使用者の関係性
法人の場合は、経営者そのものでなく、組織そのものを指すことに注意が必要です。
産業保健において、『雇う側』として関連が深いのは労働安全衛生法における安全配慮義務があげられます。安全配慮義務は、組織全体に課されており、実際に履行するのは職場における管理監督者です。これらは、労基法における使用者、安衛法における事業者と同じ立場であるとみなされます。(権限委譲)
3.まとめ
産業保健は、組織そのものと、そこで働く人を対象とした活動です。
産業保健の目的のひとつに、組織を守る、安全配慮義務を遂行することもあげられます。
法令や、そこで用られる用語についても正しく理解することが必要です。