さんぽLAB

記事

ストレスチェックを法律の観点から学ぶ

ストレスチェックは法令で義務付けられていることはわかっていても、どうしてやらなくてはいけないのか理由がわからない方もいるのではないでしょうか?あらためて、法律の観点からストレスチェックを掘り下げていきましょう。


【目次】
1.ストレスチェックが義務化された背景
2.労働安全衛生法におけるストレスチェック制度の位置づけ
3.ストレスチェックを実施しないとどうなる?
4.ストレスチェックの注意点



1.ストレスチェックが義務化された背景

前提としてストレスチェックの実施が義務化されたのは2015年に入ってからです。ストレスチェック義務化される直近では精神障害を起因とした労働災害が増加傾向にあり、2009年度には234件だったのが2012年度には475件に増加していました。また、厚生労働省が発表している、精神障害に関する事案の労災補償状によれば、精神障害の労災請求件数も年々増加しており、ストレスチェックが義務化された後の2015年度には請求件数が1515件でありましたが、2019年度には2060件にまで増加していました。それだけ、メンタル不調に関するトラブルは増えてきているのです。

そうした背景があり、2015年に労働安全衛生法が改正され、労働時間の状況の把握や心身の状態といった情報の取り扱い規定が見直され、社会問題にもなった長時間労働の制限やメンタルヘルス不調による退職、休職を防いだり、健康リスクが高い従業員に対して適切な対応をできるようにするといった狙いがありました。ストレスチェックはピンポイントで課題となっている部署等を抽出した上で、適切な対応をするツールとして利用するのが好ましいのです。


2.労働安全衛生法におけるストレスチェック制度の位置づけ

2015年に労働安全衛生法が改正されたタイミングでは化学物質による健康被害が問題となった胆管がん事案の発生や、精神障害を原因とする労災認定件数の増加などがあり、その中でも心的な負担に対応するためにストレスチェック及び面接指導の実施について改正されました。制度の目的としては労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)/労働者自身のストレスへの気づきを促す/ストレスの原因となる職場環境の改善につなげる ことを狙いとしています。

法律としては以下の内容で定められています。
法律:労働安全衛生法
省令:労働安全衛生規則
指針:心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針
通達:労働安全衛生法の一部を改正する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備に関する省令等の施行について(心理的な負担の程度を把握するための検査等関係)(平成27年基発0501第3号)

注意すべきポイントとしては、常時50人以上の労働者がいる事業場についてはストレスチェックが義務化されています。ここで言う労働者は契約社員やパート、アルバイトも含みますので注意が必要です。50名未満の事業場については努力義務となっています。また、ストレスチェックを実施する場合、実施者と実施事務従事者のをそれぞれ定める必要があり、実施者は医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若しくは精神保健福祉士であって、ストレスチェックを実施する者のことを指します。実施事務従事者は実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票のデータ入力、結果の出力又は結果の保存(事業者に指名された場合に限る)等を含む。)に携わる者を指します。この2点は明確に定められていますので、押さえておくようにしましょう。

3.ストレスチェックを実施しないとどうなる?

ストレスチェックを実施しないとどのような罰則があるのでしょうか?まず、安全配慮義務違反に問わる可能性があります。前提として事業場には労働者の安全を配慮する安全配慮義務があります。これは労働契約法第5条で定められています。ストレスチェックの実施は労働者の情報を集計し分析し、健康で安心して働けるようにするためのものですので安全配慮義務にあたると考えられます。ストレスチェックを実施しないと労働契約法違反とになる可能性があるのです。

また、ストレスチェックの未実施もしくは実施後の報告を労働基準監督署にしなかった場合、労働安全衛生による罰則が定められています。労働安全衛生法第120条では、50万円以下の罰金が発生しますので、ストレスチェックの未実施と報告漏れには注意をする必要があるのです。

4.ストレスチェックの注意点

ストレスチェックで取得する情報は個人情報で取り扱いには十分な配慮が必要となっています。就業上の措置に必要な範囲を超えて、労働者の上司や同僚にストレスチェックの結果を共有してはいけません。個人情報を保護することは回答者を守ることにも必須ですし、回答結果が不当に利用されていないことを前提として労働者がストレスチェックに回答してもらうことでを回答の質を担保するようにしましょう。

また、労働安全衛生法第66条の10(心理的な負担の程度を把握するための検査等)第3項ではストレスチェックを受けない労働者/ストレスチェックの結果提供に同意をしなかった労働者/高ストレス判定が出たが面接指導を申請しない労働者については不当な取扱いをしないように定められています。ストレスチェックを受けていない労働者に直接指導をしたり、高ストレス者に対して異動させたりといったことは不当な取扱いとなるケースもあるので注意しましょう。



ストレスチェック活用ガイドブックの無料ダウンロード


従業員のストレス状態が高まり精神疾患などを引き起こさないように未然予防するために2015年12月により法制化された「ストレスチェック」。しかし、「ストレスチェック後の改善施策の重要性を経営層や現場管理職に理解してもらえない」「健康経営の取り組みは実施しているがフィジカル面の施策に偏ってしまっている」などという課題をお持ちの方が多いのが現状です。このような課題を解決し、健康経営とストレスチェックをより効果的に進めるために必要な視点と具体的なHowToをコンパクトにまとめておりますので、ぜひご覧ください。






アドバンテッジお役立ちサービス


コメントする