産業医面談の成功例・失敗例|上谷実礼(産業医・公認心理師)
<目次>
1. 面談の成功/失敗が問われやすい「休職期間満了付近での復職面談」
2. 揉めない復職支援のための10の土台づくり
3. まとめ:安心感と納得感のある産業保健活動のカギは「土台づくり」と「真摯な姿勢」
1.面談の成功/失敗が問われやすい「休職期間満了付近での復職面談」
みなさん、こんにちは。
『産業医面談の成功例・失敗例』というテーマをいただいたときに私の頭に浮かんだことは「面談と言っても目的やタイミングが違うと成功/失敗の評価も変わってくるよなぁ」というものでした。 復職面談、メンタル不調者対応、健診事後措置、保健指導、高ストレス者面談、過重労働面談などなど、産業医が関わる面談は複数の種類がありますよね。 数ある「面談」の中でも、特に現場で頭を悩ませるのは、休職期間満了付近のタイミングで、主治医は「復職可」と診断しているのに、産業医は「復職不可」と判断する場合だと思います。そして、実際の産業医活動をしていると、このように「休職期間満了付近の復職に関して、主治医と産業医の意見が異なる」というケースに遭遇することは珍しくありません。
少し前の日経新聞の記事には休職期間満了の復職面談についてこんな記事があり、SNSがざわつきました。
『メンタル疾患、復職にハードル 主治医が容認でも産業医は慎重』
私自身、20年以上、産業医として活動していますので、「休職期間満了付近の復職に関して、主治医と産業医の意見が異なる」というケースには何度も遭遇していますが、実際には一度も揉めたことはありません。 「ミレイ先生はベテランだし、納得させるための面談技術が優れているから休職期間満了付近での復職支援でも揉めないんでしょ」と言われることもありますが、このご意見には正直、少しモヤモヤを感じています。 面談技術に関する書籍を執筆したり、研修を行ったりしているだけでなく、普段の実務では人事担当者や保健師が面談に同席していたり、オープンカウンセリングとして自身のカウンセリングも公開したりと透明性を持って取り組んでおり、多くの方から「勉強になる」というお声をいただくこともありますので、手前味噌ながら、私の面談技術は低くはないと自負しています。 しかし、たとえ私の面談技術が高かったとしても、「揉めない復職支援が、個人の面談スキルの問題に矮小化されてしまう」ことを残念に感じざるを得ません。 なぜなら、スムーズな復職支援は、休職開始時、いいえ、平素のマネジメントの時点ですでに決まっていると考えるからです。面談技術は、あくまでも「枝葉」にすぎず、普段からの土台づくりこそが、何よりも大切です。
2.揉めない復職支援のための10の土台づくり
■執筆
上谷 実礼(うえたに みれい)
ヒューマンハピネス株式会社 代表取締役/アドラー・コミュニケーション研究所(ACL) 共同代表
産業医・労働衛生コンサルタント・公認心理師
<経歴>
2000 千葉大学医学部医学科卒業
2004 千葉大学大学院医学研究院社会医学系研究室
2011 ヒューマンハピネス(株)設立、代表取締役就任
現在は産業医業務に従事する他、心理カウンセリング・講演・研修・執筆・ワークショップ主催・自己成長のためのオンラインコミュニティ主宰など
<主な専門分野>
ゲシュタルト療法・ポリヴェーガル理論・アドラー心理学
<著書>
『心を病む力: 生きづらさから始める人生の再構築』東洋経済新報社
『ミレイ先生のアドラー流“勇気づけ"保健指導』
『ナースのためのアドラー流勇気づけ医療コミュニケーション』
『ミレイ先生のアドラー流勇気づけメンタルヘルスサポート』
『ミレイ先生のアドラー流勇気づけ テレワーク・在宅勤務トラブルサポート』
以上メディカ出版
『自分のことも、相手の心もよくわかる! しあわせのレッスン』KADOKAWA


