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産業保健の外部機関って何がある?連携や活用方法を分かりやすく解説!

外部機関との連携
産業保健スタッフとして職場における産業保健活動を効果的に進めていく上で、「外部機関」との連携は必要不可欠です。
外部機関には、公営や民営など様々なものがありますが、上手に活用することで労働者の健康増進のみでなく事業所全体の健康増進や健康経営にも繋がります。
この記事では、産業保健に関わる主な外部機関の役割と上手に活用する方法についてお伝えいたします。

目次

1.産業保健に関わる主な外部機関
2.労働基準監督署
3.産業保健支援センター(さんぽセンター)
4.その他の外部機関
 ①メンタルヘルスサービス機関(外部EAP機関)
 ②労災病院
 ③中央労働災害防止協会(中災防)
 ④障害者支援センター
 ⑤発達障害者支援センター
5.産業看護職の役割

1 産業保健に関わる主な外部機関

産業保健に関わる外部機関は数多くあり、それぞれの役割は多岐にわたります。

  • 健康保険組合
  • 病院やクリニックなどの外部医療機関
  • 厚生労働省の組織である「労働基準監督署」
  • 独立行政法人労働者健康安全機構が管轄する「産業保健総合支援センター」や「労災病院」
  • 労働災害防止における教育や技術支援を行う「中央労働災害防止協会」
  • メンタルヘルスサービス機関「外部EAP機関」
  • 作業環境測定を受託する「作業環境測定機関」
  • 職場復帰や障害者雇用に活用できる「リワーク施設」や「発達障害者支援センター」など

すべて覚える必要はありませんが、必要な時にすぐ調べられるようにしておくとよいでしょう。

産業保健に関わる主な外部機関
今回は、この中でも特に活用をする「労働基準監督署」「産業保健総合支援センター」を中心にお話いたします。

2 労働基準監督署

労働基準監督署(労基署)とは、厚生労働省が管轄している機関で主に、労働基準法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法等の労働関係に関する法律に基づき監督・指導、届出審査・受理、相談や申告の受付などを行っています。

産業看護職としては、下記のような連携が可能です。

① 相談

労基署は、事業者や労働者から労働条件や安全衛生、労働災害などの相談を受け付けています。各種法令で対応に困ったことがあれば、管轄の労基署の窓口へ相談すると良いでしょう。また、相談した内容については、日付や、担当者などの記録を記載して保管しておくことをお勧めします。

② 各種健康診断やストレスチェックの実施報告

健康診断やストレスチェックの結果など、安全衛生に関わるさまざまな報告書を事業者は労働基準監督署に提出しています。産業看護職も、その一部の届出作業や、届出を行うデータ作成に関わることがあります。

③ 労基署による立ち入り検査への対応

事業所に労基署の担当者が立ち入り、健康診断の実施状況や有害な化学物質に関する措置を確認することがあります。産業看護職として、いつ立ち入りがあっても対応できるよう各種の記録をすぐに取り出せるよう管理することが求められます。


3 産業保健支援センター(さんぽセンター)

産業保健支援センター(さんぽセンター)とは、産業保健に関わる全ての人に対し、無料で産業保健に関する研修や相談、情報提供などを提供している機関です。
さんぽセンターは、都道府県ごとに設置され、産業保健スタッフを支援すると共に、事業所の健康管理への啓発を行っています。

さんぽセンターの役割は次の通りです。

① 相談窓口

産業医や保健師などの専門スタッフにより相談窓口が設置されており、電話やメールなどで相談することができます。

② 研修

産業医等の専門職より、産業保健に関する専門的かつ実践的な研修を定期的に開催しています。また、講師の紹介等の支援も行っています。

③ 情報提供

ホームページやメールマガジン、情報誌等で産業保健に関する情報提供を行っています。
また、図書や教材などの貸し出しや閲覧も行っています。

④ 広報・啓発

事業者を対象として健康管理などに関するセミナーを実施しています。

⑤ 地域窓口の運営

産業医の選任義務がない「労働者数が50名未満の小規模事業所」への支援を目的として、地域窓口(地域産業保健センター)を、おおむね労基署の管轄地区へ設置しています。
地域窓口では、登録産業医や登録保健師等が整備されており、法令に基づく保健指導等のサービスを原則無料で受けることができます。<※利用制限あり>
産業医のいない小規模事業所は、地域窓口を有効に活用すると良いでしょう。

《具体的な活用方法の例》

  • 長時間労働者へ医師による面接指導
  • 健康診断結果に基づく医師や保健師による保健指導や健康相談
  • 職場復帰に関する相談
  • 作業環境のリスク評価や改善方法の相談


4 その他の外部機関

① メンタルヘルスサービス機関(外部EAP機関)

EAP(Employee Assistance Program、従業員支援プログラム)とは、厚生労働省が定める「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で定める「4つのケア」のうち、「事業場外資源によるケア」にあてはまり、社外の機関(外部EAP機関)との契約によって企業に導入されています。
外部EAP機関は、メンタルヘルス等に関する相談窓口の提供や、各種の研修、個別相談、職場復帰支援の支援など、さまざまなサービスを提供しています。労働者がEAPのサービスを利用しやすいよう、相談窓口や利用方法の周知などを行っていくことが重要です。


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② 労災病院

労災病院とは、労働者が通勤や勤務が原因で負傷や病気になった場合に無償で治療を受けることができる医療機関です。労災病院では、労働者の職業生活を担う中核的役割を担うため、予防や医療、リハビリテーション、職場復帰など行動・専門的な医療を提供しています。
怪我や事故はいつ発生するかわかりません。事業所周辺の労災病院に関する情報は事前に調べておくと良いでしょう。

③ 中央労働災害防止協会(中災防)

中災防は、事業主の自主的な労働災害防止活動を促進することを目的として設立された団体です。企業の安全衛生スタッフの養成のため、セミナーの開催や、安全衛生に関する技術支援、安全衛生情報の提供などを行っています。

④ 障害者職業センター

障害者職業センターとは、働く障害者の自立を図り、障害者雇用の促進や安定を図ること目的として全国に設置されています。
ここでは、ハローワークや地域障害者職業センター、職場等と連携して、下記のことを行っています。

  • 就業に関する相談支援
  • 障害特性を踏まえた雇用に関する助言
  • 関係機関との連絡調整

⑤ 発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは、発達障害者への支援を目的とした専門機関で、都道府県や指定都市、または都道府県知事等が指定した社会福祉法人・特定非営利活動法人等が運営しています。ここでは、下記のことを行っています。

  • 障害者や家族、周囲の人からの相談支援
  • 発達検査の実施や支援の助言
  • 就労の相談や就業適正の助言
  • 啓発資料の配布、研修


5 産業看護職の役割

事業所にとって、外部機関の役割を理解し、必要な際に活用できることは、リスク管理や健康増進を行う上で非常に重要です。利用可能な外部機関の情報をしっかりと把握しきましょう。

また、労働者が必要な際にスムーズに受診できるよう、生活習慣病やメンタルヘルスの問題に対応できる医療機関や、緊急時に受診できる医療機関をリスト化しておくことをおすすめします。
産業看護職として、事業所、労働者、そして外部医療機関との連携体制を整えておくことが重要です。

執筆:さんぽLAB運営事務局 保健師

監修:難波 克行 産業医


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■監修医師のご紹介


産業医 難波 克行 先生

アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問​
アズビル株式会社 統括産業医​

メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆​
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信​

代表書籍​
『職場のメンタルヘルス入門』​
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』​
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』​


■参考文献


岡庭 豊(2019)職場の健康が見える 産業保健の基礎と健康経営.医療情報科学研究所.
独立行政法人労働者健康安全機構|産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
独立行政法人労働者健康安全機構|労災病院とは
中央労働災害防止協会|中災防について
厚生労働省|障害者就業・生活支援センターの概要

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