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男女の更年期障害の違いとセルフケア・治療について詳しく解説

更年期障害は、加齢に伴うホルモン分泌量の低下に伴い、女性は閉経前後(概ね45~55歳)、男性では40歳以降と働き盛りの就労世代に起こります。
経済産業省では、更年期障害による欠勤や業務効率の低下などの年間の経済損失は女性で1.9兆円、男性で1.2兆円にも及ぶと推計しています。労働生産性への影響が大きいことがわかってきている中、更年期障害の症状は様々で、個人差が大きく、なかなか理解されにくいのが現状です。今回は、更年期障害について解説していきます。



目次

1.更年期障害とは
2.女性の更年期障害~その原因と症状
3.男性の更年期障害~その原因と症状
4.気になる症状のセルフチェック・セルフケア
5.更年期障害の治療法
6.まとめ


1. 更年期障害とは


日本人の閉経(1年間月経がない状態)平均年齢は、50.5歳ですが、これを挟んだ前後10年間を更年期(周閉経期)と呼びます。閉経は、個人差が大きく、早い人では40歳台前半、遅い人では50歳台後半に閉経を迎えると言われています。

  • 更年期症状:更年期に現れる様々な症状の中で、他の疾患に起因しないもの
  • 更年期障害:更年期に現れる様々な症状により日常生活に支障を来す状態

なお、男性の更年期障害については、概ね40歳以降に男性ホルモン(テストステロン)の減少により、女性更年期障害と類似した症状を呈しますが、病態が複雑で、まだ十分に解明されていないのが現状です。

更年期障害の特徴の一つとして、その症状や重症度には個人差があることがあげられます。
これらの症状が他の病気によるものではないことを確認する必要がありますが、本人も更年期障害であると自覚していない場合も多いです。

性ホルモン分泌量

更年期障害の原因には、性ホルモンの分泌量の減少が大きく影響しています。男女それぞれの特徴について詳しくみていきましょう。



2.女性の更年期障害~その原因と症状


女性の更年期障害の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)が大きくゆらぎながら低下していくことです。それに加えて、加齢などの身体的な要因に加え、育ってきた環境や性格といった心理的な要因、さらに職場や家庭での人間関係といった社会的な要因が複雑に影響しあって発症すると考えられています。
そのため、症状は非常に多岐に渡り、その人独自の症状が現れるため、個人差が大きいという特徴があります。

また、女性の更年期障害は、女性ホルモン分泌量の減少に体が追いつかないことで起こります。更年期の終わりのサインは曖昧ですが、50代後半以降は、下記症状が落ち着きを取り戻すようになってくることが一般的です。

【症状】

  • 身体症状
    血管拡張と放熱に関係する症状(血管運動神経症状):ホットフラッシュ、発汗、ほてり
    自律神経症状:動悸、頭痛、吐き気、息切れ、めまい
    体の痛み:肩こり、腰痛、関節痛

  • 精神症状
    憂鬱、いらいら、不安、情緒不安定、倦怠感、不眠

  • 泌尿生殖器症状
    頻尿、尿漏れ、外陰部違和感、性交痛



3.男性の更年期障害~その原因と症状


女性特有と思われがちな更年期の症状は男性にもあり、性ホルモンの低下やバランスの乱れが原因とされています。男性の場合、閉経といったわかりやすい目安がないため、症状を見逃しやすい傾向があります。また、男性ホルモン(テストステロン)は一般的に中年以降、加齢とともに穏やかに減少します。

女性の更年期障害とは異なり、加齢によるホルモンの減少が極端ではなく、発症する年代が幅広いことが特徴です。現状、男性更年期障害の病態は複雑で、まだ十分な解明がされていません。

【症状】

  • 身体症状
    関節症、筋肉痛 (痛みを感じやすくなる)、疲れやすい 、発汗やほてり 、肥満、メタボ

  • 精神症状
    憂鬱、いらいら、不安、不眠、興味や意欲の喪失、集中力・記憶力の低下

  • 泌尿生殖器症状
    頻尿、ED、性欲低下




4.気になる症状のセルフチェック・セルフケア


厚生労働省では、更年期症状に対する医療機関受診状況として、更年期症状を自覚し始めてから医療機関を受診するまでの期間について調査をした結果「受診していない」と回答した人の割合は、40歳代・50歳代で男女とも約8~9割を占めていました。上記の調査からも、医療機関受診へのハードルが高いことがわかります。
気になる症状がみられる際は、まずセルフチェックをしてみましょう。

女性の更年期障害:SMI スコア(簡略更年期指数)

女性の更年期症状の状況を示す一つの指標としての SMI スコア(Simplified Menopausal Index、簡略更年期指数)があります。それぞれ、強・中・弱・なし、で得点を付け(項目によって配点は異なる)、その合計点により自己評価をします。
※なお、SMI スコアは、更年期における女性が医療機関を受診する目安などを一定の方法で評価したものであり、スコアの高さ自体が更年期障害を示すものではありません。

SMI

【合計点】
  • ~25点:異常なし。上手に更年期を過ごせている
  • 26~50点:食事や運動に注意を払いましょう
  • 51~65点:更年期・閉経外来を受診しましょう
  • 66~80点:計画的な治療が必要でしょう
  • 81~100点:早めに精密検査へ。長期にわたる治療が必要

男性の更年期障害:AMSスコア(男性更年期障害質問票)

男性の更年期障害の状況を示す一つの指標として「Aging Male’s Symptoms score(AMSスコア)」があります。性機能に関連する質問が5項目、身体機能関連が7項目、心理関連が5項目の計17項目からなります。各項目を1~5点の5段階でチェック(なし:1点、軽い:2点、中等度:3点、重い:4点、極めて重い:5点)し、合計点で判定します。

AMS

【合計点】
  • ~26点:症状なし
  • 27~36点:軽度
  • 37~49点:中程度
  • 50点~:重度

セルフケア

更年期障害に対するセルフケアは、生活習慣を整え、心身のバランスを保つことが重要です。
男性は、バランスの良い食事や下半身を使う運動、コミュニティ活動を通じた交流が効果的です。
女性は、規則正しい生活やウォーキング・ヨガで自律神経を整え、趣味やリラクゼーションで気分転換を図ること良いでしょう。
どちらも十分な睡眠と栄養が心身の健康維持に役立ち、ストレス軽減やエネルギーの向上に繋がります。




5.更年期障害の治療法


男女ともに更年期障害のおもな治療は、薬物療法によっておこなわれます。更年期障害のその症状は、個人差が大きく、身体面・心理面・環境面の原因が複雑に関与し、症状を引き起こします。
また、40代~50代という就労世代では、症状の原因として、他の疾患が隠れている場合もあります。
治療を開始する際は、主治医と相談の上、適切な治療を選択することが重要です。

  • ホルモン補充療法(HRT)
    更年期障害はおもに性ホルモン分泌の減少が原因とされています。
    女性であれば女性ホルモン(エストロゲン)を補充するホルモン療法(HRT)がおこなわれます。男性のホルモン補充療法は、一般的にテストステロン注射が行われます。

  • 漢方薬
    女性:当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸など
    男性:柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、半夏厚朴湯など
    いずれも綿密な問診の上、処方されます。自己判断で市販の漢方薬を使用することは、症状悪化や副作用を招くことがあります。必ず医師の診察を受けましょう。

  • 症状への対処策~対症療法
    精神症状→抗うつ薬・抗不安薬・催眠鎮静薬等
    性機能の低下→ED治療薬等




6.まとめ


就労世代に多い更年期障害は、労働生産性の低下や企業の経済損失に直結する課題です。
更年期は、ライフステージの中でも身体・心理・社会的に大きな変化が重なり、心身に強いストレスがかかりやすい時期です。そのため、こうした変化が更年期症状を誘発・悪化させ、結果として離職を選択する労働者も少なくありません。
現在、多くの企業が健康経営に取り組んでいる中、更年期症状を抱える社員が安心して働ける職場環境の整備と、理解促進のための啓発活動が重要となります。企業全体で支援体制を整えることで、就労世代が抱える更年期障害に対するサポート体制を強化し、生産性向上に繋げていきましょう。


■執筆:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■参考資料
経済産業省|女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について
厚生労働省|「更年期症状・障害に関する意識調査」について
厚生労働省研究班|女性の健康推進室 女性の健康推進室 ヘルスケアラボ ホームページ
日本産婦人科学会ホームページ
内分泌学会|男性更年期障害(加齢性腺機能低下症、LOH症候群)


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