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飲酒習慣と肝臓の健康管理|保健指導で伝えたい適正飲酒のポイント

飲酒習慣と肝臓の健康管理

健康診断でγ-GTPやAST、ALTの異常を指摘されても、自覚症状がないため危機感を持ちにくく、「少し高いだけだから大丈夫」と考える人は少なくありません。

しかし肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、多くの人は症状がないことから受診や生活習慣の改善の必要性を実感しにくいのが現状です。一方で、異常を放置すると脂肪肝や肝炎が進行し、将来的に肝硬変や肝がんにつながる可能性があります。

そのため保健指導では、健診結果の説明だけで終わらせるのではなく、飲酒習慣や生活背景を確認しながら、適正飲酒や生活習慣改善につなげる支援が重要です。

本記事では、飲酒習慣と肝臓の健康管理について、保健指導で押さえておきたいポイントを解説します。


目次

  1. なぜ今、飲酒習慣と肝臓の健康管理が重要なのか
  2. 適正飲酒とは何か:保健指導で押さえたい基本
  3. 健診結果を行動変容につなげる保健指導の進め方
  4. 健診後の継続的なフォローが重要
  5. まとめ

1.なぜ今、飲酒習慣と肝臓の健康管理が重要なのか

肝臓は異常に気付きにくい臓器

肝臓は、栄養素の代謝やエネルギーの貯蔵、有害物質の解毒など、生命維持に欠かせない重要な役割を担っています。一方で、予備能力が高いため、障害が進行しても自覚症状が現れにくい特徴があります。

そのため、肝機能異常があっても気付きにくく、健康診断で初めて異常を指摘されるケースも少なくありません。また、肝機能異常の背景には飲酒習慣が関係していることもあります。

働く世代は飲酒習慣が定着しやすい

働く世代は特に、会食や接待、同僚との付き合いなどで飲酒の機会が生じやすい環境にあります。また、仕事上のストレスや疲労の解消手段として飲酒が習慣化している人も少なくありません。

さらに、業務や家庭生活の忙しさから健康管理が後回しになり、自身の飲酒量を正確に把握できていないケースもあります。飲酒習慣に加えて運動不足や食生活の乱れが重なることで、肝機能異常や生活習慣病のリスクが高まることもあります。

肝機能異常は健診後の対応が重要

肝疾患は初期段階では自覚症状が現れにくいため、健康診断が異常を発見する重要な機会になります。

健康診断ではγ-GTPやAST、ALTなどの肝機能関連項目が測定されます。これらの数値に異常がみられた場合は、その背景にある飲酒習慣や生活習慣を確認することが必要です。

特に、毎年同様の指摘を受けているにもかかわらず、医療機関への受診や生活習慣改善につながっていないケースは少なくありません。異常値が続いている場合や高値がみられる場合には、早めに医療機関の受診につなげるとともに、保健指導による継続的な支援が求められます。

さんぽLABリーフレット「肝臓」

2.適正飲酒とは何か:保健指導で押さえたい基本

①適正飲酒の考え方

厚生労働省の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、飲酒量を把握する際に「純アルコール量」で考えることが推奨されています。そのため保健指導では、お酒の種類ではなく、「どのくらいアルコールを摂取しているか」を確認することが大切です。

実際には、「ビールしか飲まないから大丈夫」「日本酒は少量しか飲まないから問題ない」と考えている人もいます。しかし、健康リスクを評価するうえで重要なのは酒類ではなく、摂取しているアルコール量です。そのため、自身の飲酒量を純アルコール量に換算して把握することが適正飲酒への第一歩となります。

②純アルコール量で飲酒量を把握する

純アルコール20gの目安は以下のとおりです。

酒類 純アルコール20gの目安
ビール(5%) 500ml
日本酒(15%) 1合(180ml)
ワイン(14%) 約200ml
焼酎(25%) 約100ml
ウイスキー(43%) 約60ml

対象者が実際に飲んでいる量を換算しながら説明することで、自身の飲酒量を客観的に理解しやすくなります。

③飲酒量だけでなく飲酒パターンにも注目する

飲酒による健康リスクは飲酒量だけで決まるわけではありません。飲酒頻度や飲み方も重要な視点です。

保健指導では、次のような飲酒習慣がないか確認しましょう。

  • 飲酒頻度が高い
  • 一度に多量の飲酒をする
  • 飲酒が習慣化している
  • 自身の飲酒量を把握していない

また、飲酒する場面や背景を確認することで、対象者に合わせた支援につなげやすくなります。

さんぽLABリーフレット「お酒」

3.健診結果を行動変容につなげる保健指導の進め方

結果説明だけでは行動は変わらない

保健指導では、検査値を一方的に説明するだけではなく、対象者自身が健診結果をどう受け止めているのかを確認することも大切です。

例えば、

「今回の結果について、ご自身ではどのようなことが影響していると思いますか?」

「お酒の飲み方で気になっていることはありますか?」

といった問いかけを用いることで、対象者の認識や改善への意欲を把握しやすくなります。

検査結果が本人の生活とどう関係しているのかを理解できるよう支援することで、「自分事」として受け止めてもらいやすくなります。

飲酒状況を具体的に把握する

面談では次のような内容を確認しましょう。

  • 飲酒頻度(毎日、週2〜3回など)
  • 飲酒量(ビール500ml、日本酒1合など)
  • 飲酒する時間帯(就寝前など)
  • 飲酒の目的(ストレス解消、付き合い、習慣など)
  • 飲酒する場面(会食、自宅、オンライン飲み会など)
  • 飲まない日の有無
  • ストレスの状況(睡眠状況など)

飲酒量だけではなく、「なぜ飲むのか」という背景を理解することが重要です。

例えば、ストレス解消目的の飲酒と、会食中心の飲酒では支援方法が異なります。本人の生活背景を把握することで、現実的な改善策を一緒に考えやすくなります。

健診結果と生活習慣を結び付けて伝える

対象者の中には、自覚症状がないため健診結果を深刻に受け止めていない人もいます。

そのため、

  • 健診結果はどのような状態を示しているのか
  • 現在の飲酒習慣とどのような関連が考えられるのか
  • 今後どのようなリスクがあるのか

をわかりやすく説明することが大切です。

健診結果を単なる数値として捉えるのではなく、自身の健康状態を振り返る機会として活用してもらう視点が求められます。

小さな目標設定を行う

飲酒習慣の改善では、達成可能な目標から始めることが重要です。

例えば、

  • 毎日の飲酒を週5日にする
  • ビール2本を1本にする
  • 週1日から飲まない日をつくる
  • ノンアルコール飲料を取り入れる

などの目標が考えられます。

また、「飲酒量を半分にする」といった大きな目標よりも、「まずは週1日飲まない日をつくる」などの小さな目標の方が取り組みやすい場合があります。達成できた経験を積み重ねることが、継続的な生活習慣の改善につながります。


4.健診後の継続的なフォローが重要

健康診断で異常を指摘されても、受診や生活習慣の改善につながらないことがあります。そのため、一度の保健指導で終わらせるのではなく、その後の状況を継続的に確認していくことが大切です。また、必要に応じて受診結果を確認し、その後の支援に活かしていくことも重要です。

さらに、肝機能関連項目は単年度の結果だけでなく、経年変化にも着目する必要があります。異常値が継続している場合や、基準値内であっても数値が上昇傾向にある場合には、生活習慣や健康状態に変化がないか確認することが求められます。

健康診断は異常を見つけるだけでなく、自身の健康状態を定期的に振り返る機会でもあります。健診結果を継続的な健康管理に活かすことで、肝疾患の予防や重症化予防につなげることができます。

さんぽLABリーフレット

5.まとめ

飲酒習慣による肝機能異常は、自覚症状がないまま進行することがあります。そのため保健指導では、健診結果を伝えるだけで終わらせず、飲酒習慣や生活背景を振り返りながら支援することが重要です。

特に押さえておきたいポイントは次の3つです。

  • 適正飲酒は純アルコール量で考える
  • 飲酒量だけでなく飲酒頻度や飲酒パターンも確認する
  • 無理のない目標設定で継続的な改善を支援する

飲酒習慣の改善は一度の面談で実現するものではありません。健診結果をきっかけとして継続的な支援を行い、受診勧奨や生活習慣改善につなげることが産業保健スタッフに求められています。


■参考


1)厚生労働省 「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(2024)」
2)厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールによる健康障害」
3)厚生労働省 e-ヘルスネット「アルコールと肝臓病」

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