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社会・文化的問題と働く女性の健康リスク

少子高齢化が進む日本において、女性が働きやすい職場をつくることは、労働力の確保という観点からも非常に重要であり、働く女性の健康管理は産業保健活動においても重要視されています。
本記事では、現代女性のライフスタイル、社会・文化的性差についての課題、女性の健康問題についてご説明します。

※本記事は2023年8月23日(水)に実施された勉強会について、次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。
②社会・文化的問題と働く女性の健康リスク【女性が活躍できる職場づくり 産業医にできる支援とは?】


【目次】
1.現代女性のライフスタイルと就業
2.社会・文化的性差としての課題
3.就労期女性の健康リスク
4.女性ホルモンの影響
5.女性特有の健康課題についての行動を促すための取り組み


1.現代女性のライフスタイルと就業

下記は、現代女性のライフスタイルを示す6つの項目です。


現代女性のライフスタイルと就業

長期的にみると6つすべての項目で上昇しています。
ただし、5年、10年と短期的にみると、就労者における女性の割合、非正規雇用の割合は減少傾向にあります。
平均寿命、初婚年齢や初産年齢もほとんど変化がありません。最も変化があるのは生涯未婚率です。



2.社会・文化的性差としての課題

日本には、社会的・文化的性差としての課題もあります。


社会・文化的性差としての課題

日本における課題を下記に4つ挙げました。

  • 雇用形態の違いによる健康格差
  • 家事育児介護時間の違い
  • 人間関係や役割分担における心身の不調への影響
  • ジェンダーギャップの存在


このように日本には、解決しなければならない課題は多いと言わざるを得ませんが、いいこともあります。
2022年に初めて、教育については男女格差なしというデータが出ています。
教育と同じレベルで、それ以外の項目についてもジェンダーギャップがなくなれば女性が活躍しやすくなる社会に変わっていくだろうと思っています。

ここで少し、数年で女性の活躍が推進されていますが、本当に女性が働きやすくなったといえるのか少し考えてみたいと思います。

少子高齢化は待ったなしで進行しており、女性も働く労働力として社会に貢献することが求められている一方で、妊娠適齢期はキャリア形成期と重なってしまいます。
子供一人あたりの養育費はどんどん高騰しており、必然的に共働き世帯が増加していくことは避けられない風潮であるといえます。また、政府が女性の活躍を推進してくれるのはありがたいと思う反面、そもそも女性自身が出世を望んでいないケースもよく耳にします。

働き方改革は女性にとっていいことだとは思うのですが、働き方改革のなかに家事労働は少しも入っていません。この家事労働をどう考えていくかも課題といえます。



3.就労期女性の健康リスク



就労期女性の健康リスクの特徴

健康診断における女性に多い健康問題としては、貧血低血圧という問題があります。

月経にまつわる痛みや、頭痛などもあります。

母性健康管理は、妊娠の状態だけでなく、いわゆる妊活中の方への支援も含めて考える必要があります。
就労期に頻度の高い、女性特有のがんもとても重要で産業保健スタッフとして対応しなければならない問題です。

更年期障害は、必ず個人差があるものですので、備えて準備をしておくことも重要です。

いずれの健康リスクも、QOLを損なう病態が多くて、アブセンティーズムよりもプレゼンティーズムに影響を与える疾患や症状が多い特徴があります。




4.女性ホルモンの影響

女性ホルモンは、排卵期、黄体期、卵胞期のサイクルを月1回繰り返しているのですが、
現代女性は昔の女性と比べて女性ホルモンにさらされる機会が増加しており、働くうえで不調を来たしやすい原因となっています。


女性ホルモンの影響

5.女性特有の健康課題についての行動を促すための取り組み

経済産業省から、『健康経営における女性の健康の取り組みについて』が発表されており、そこから引用した取り組みを下記にあげます。


女性特有の健康課題について行動を促すための取り組み

これらの取り組みはとても重要だと思いますが、これらの取り組みを全て実施したら行動を促せるかというと懐疑的です。
女性自身が知識を持ち、自分の人生をライフステージ別に考えていく機会を提供していくことが重要であると感じています。




講師


大津真弓先生

産業医科大学卒業(2002年)
双子の妊娠・出産を機に独立
北関東で産業保健サービスを展開中
自治医科大学大学院 医学研究科 博士課程修了(2017年)


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