さんぽLAB

記事

支援者として成長したいあなたへ|メンタルヘルス面談に役立つ5つの基本スキルを解説

産業保健職やカウンセラーとして「相談者に寄り添いたい」と思う一方で、「どこまで踏み込んでいいのか分からない」「自分の言葉が伝わっているか不安」と悩むことはありませんか?
本記事では、面談に自信が持てるようになるための基本スキル――傾聴・共感・アイメッセージ・リフレーミング・バウンダリー――を、実例とともに分かりやすくご紹介します。


上谷実礼(ヒューマンハピネス株式会社 代表取締役)
※本記事は、2025年1月29日に開催したセミナー「ミレイ先生と学ぶ!職場で使えるメンタルヘルスサポート」の一部を編集したものです。


<目次>

1. 職場で使えるメンタルヘルスサポート:支援者自身を守るためのヒント
2. メンタルヘルスサポートに必要な面談スキル
3. リフレーミングとバウンダリー:支援職に必要な視点と線引き
4. まずは自分を勇気づける:サステナブルな支援者になるために
5. ケース別事例紹介とまとめ:支援のスキルを実践につなげる


1.職場で使えるメンタルヘルスサポート:支援者自身を守るためのヒント

■支援者だって、しんどい。

支援者である私たち自身が感じる“しんどさ”。それには、以下のような背景があります。

  • 頑張っているのに、不調者が減らず無力感を覚える
  • 不調者の行動に対してイライラしてしまうことがある
  • 優しく接したら個人のSNSに連絡が来て精神的に疲弊する
  • ビジネスライクに接すると「冷たい」と言われる
  • 逃げ場のない立場で、自分自身がメンタル不調になりそう…

このような「支援者のしんどさ」の背景には、高い感情労働の要求、慢性的な人手不足、強い使命感、自分の限界を超えた対応などが影響しています。さらに、支援者自身がサポートを受けにくいという構造的な課題もあるのです。

■支援者の土台となるマインド:アドラー心理学から学ぶ

アドラー心理学では、人間の究極の目標は「所属感」を持つこととされています。仲間とつながって「ここにいていい」と感じること。そして、自分の存在が役に立っていると感じる「貢献感」。この2つが揃って初めて、人は安心して社会の中で生きられるのです。
この「所属感」と「貢献感」が得られる関わりを、アドラー心理学では「勇気づけ」と呼びます。つまり、支援者としての関わりの中で、「あなたは仲間だよ」「今のあなたのままで、役に立てることがあるよ」と伝えることが勇気づけの基本となります。

所属感と貢献感

■勇気づけの具体的アクション

① 挨拶を大切にする

挨拶は、ただのマナーではありません。
目を合わせて挨拶することは、「私はあなたを見ています」「あなたの存在を大切に思っています」というメッセージでもあります。
挨拶を無視されることが、どれほど心を傷つけるか。メンタル不調の方の声からもその重要性がわかります。

挨拶を大切にする

② 感謝を伝える

「ありがとう」は、最も身近で力強い勇気づけの言葉です。
たとえば「時間通りに面談に来てくれてありがとう」「必要な書類を提出してくれてありがとう」と伝えることで、相手は「自分は仲間として大切にされている」と感じられます。
当たり前のことに感謝するのは難しいかもしれませんが、「ありがたい」は「当たり前ではない」からこそ生まれる感情です。
この感覚を忘れないことが、良好な人間関係の鍵になるのです。

感謝を伝える

■勇気づけは集団にも有効

「集団に対しても勇気づけは使えますか?」というご質問がありました。
答えは、もちろん「Yes」です。
感謝や挨拶は個人だけでなく、集団に対しても有効です。研修やセミナーで「ありがとうございます」と声をかけること自体が、所属感や貢献感を生む力になります。

■「分からない」は、伝えていい

もう一つの質問に、「新人職員が上司の厳しい指導で悩んでいるとき、話を聞くだけでよいのか?」というものがありました。
このようなときには、「ただ聞く」ことも立派な支援ですが、わからないことがあれば素直に「わからない」と伝えていいのです。
「どうしてほしいか分からないんだけど、何かある?」「この関わり方でよさそう?」と、対等な関係で確認する姿勢が、勇気づけに繋がります。

■支援者の自己開示について

自己開示についても、「してよいのか?」という声があります。
結論としては、「しても良い」です。ただし、個人情報(住所や家族構成など)は開示せず、今この瞬間の気持ちや状態を伝えることがポイントです。
「分からないです」「迷ってます」といった素直な感情を伝えることも、支援関係における信頼を深め、協力的な関係性を築く土台になります。

支援者の自己開示

■繋がりを育て、支援者自身を守るために

支援者も一人の人間です。心をすり減らしていては、持続可能な支援はできません。
「所属感」と「貢献感」を支援対象者に届けながら、自分自身にも勇気づけを行っていく。
そのためには、日々の挨拶と感謝、そして自分自身の正直な気持ちの開示が、大きな力になります。


2.メンタルヘルスサポートに必要な面談スキル

この記事は無料会員登録で続きをご覧いただけます



■講師


上谷 実礼(産業医)

ヒューマンハピネス株式会社 代表取締役

<経歴>

2000 千葉大学医学部医学科卒業 医師国家試験合格
千葉大学医学部附属病院などで臨床研修
2004 千葉大学大学院医学研究院社会医学系研究室
助教・講師、産業医の実務に従事、博士号取得
2010 労働衛生コンサルタント国家試験合格
2011 ヒューマンハピネス(株)設立、代表取締役就任
2021 公認心理師国家試験合格
2023 アドラー・コミュニケーション研究所(ACL)設立

<主な専門分野>

  • ポリヴェーガル理論をビジネスの現場に活かす
  • マネジメント/リーダーシップ
  • 評価面談トレーニング
  • フィードバックトレーニング
  • 心理的安全性
  • レジリエンス
  • チームビルディング
  • テレワークマネジメント
  • メンタルヘルス
  • セルフケア/ラインケア
コメントする