さんぽLAB

記事

健康保険組合とは?設立の目的や役割、コラボヘルスについて詳しく解説

設立の目的や業務内容、コラボヘルス

皆さんは、健康保険組合についてどのようなイメージをお持ちですか?
産業保健の現場では、「特定保健指導」「コラボヘルス」などの言葉が耳に入ることが多いかと思います。従業員の健康増進や予防を効果的に行うためには、企業と健康保険組合の連携が欠かせません。今回の記事では、健康保険組合について理解を深めていきましょう。



目次

1.健康保険組合とは~設立の目的と役割
2.特定保健指導~実施主体とその目的
3.事業主と健康保険組合の連携~コラボヘルス
4.まとめ


1. 健康保険組合とは~設立の目的と役割


健康保険組合は、従業員やその家族である被保険者・被扶養者の福利厚生を目的として設立される団体です。企業とは異なる公法人であり、主に以下の業務を担っています。

  • 保険給付:被保険者や被扶養者の病気やけが、傷病による休業、出産、死亡などに対して、医療費の負担や各種給付金を支給する

  • 保健事業:被保険者や被扶養者の「健康づくり」をサポートするための各種事業。健康情報の提供、病気の予防を目的とした各種健診など、様々な事業を行う

健康保険事業として、保険料を徴収したり、保険給付などを行う運営主体である健康保険組合を「保険者」といいます。それに対して、加入者を「被保険者」といいます。
一般に、中小企業の従業員は全国健康保険協会に、大企業の従業員は健康保険組合に加入しています。また、設立形態には単独設立の単一組合や、同業種の企業が合同で設立する総合組合などがあり、将来に渡って安定した事業運営が見込める場合に、厚生労働省より設立が認可されます。

健康保険組合は「保険給付」を通じて、病気になった時のサポートを行い、「保健事業」を通じて、病気にならないような健康づくりのサポートをしています。



2. 特定保健指導~実施主体とその目的


2008年から施行された「高齢者の医療の確保に関する法律」により、保険者(健康保険組合など)に対して、内臓脂肪の蓄積等に着目した生活習慣病に関する健康診査(特定健康診査)及び、特定健診の結果により健康の保持に努める必要がある者に対する保健指導(特定保健指導)の実施が義務付けられました。

特定健診・特定保健指導を充実させ、重症化に至る前に適切な生活習慣の実践に繋げることは、医療費の適正化等の観点からも非常に大切です。

【定期健康診断と特定健康診査の比較】

健診名称 定期健康診断 特定健康診査
根拠法令 労働安全衛生法 高齢者の医療の確保に関する法律
実施主体 事業者 保険者
対象者 労働者 40歳以上75歳未満の加入者
(被保険者・被扶養者)
健診目的 労働者の健康状況の把握
適正配置
作業関連疾患の予防
メタボリック症候群予防のための対象者の選定
医療費の適正化
保健指導 事業者は、健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師または保健師による保健指導を行うように努めなければならない 保険者は、特定健康診査実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、特定保健指導を行うものとする


保険者は法律に基づき、特定健診・特定保健指導を実施します。また、その結果を国に報告することが義務付けられています。特定保健指導の対象者は、特定健診の健診の結果から、内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因の数に着目し、適切な指導が受けられるよう、レベル別(動機付け支援・積極体支援)に選定されます。



3. 事業主と健康保険組合の連携~コラボヘルス


健康保険組合の事業の一つである保健事業には、様々な取り組みがあり、特に企業との連携が重要視されています。健康診断の結果やレセプト(診療報酬明細書)などの健康や医療に関する情報は、特定健診・特定保健指導制度の導入やレセプトの電子化を経て、様々な分析が可能となりました。

データヘルスとは?

健康保険組合加入者の健康データを活用したデータ分析に基づき、個人の状況に応じた保健事業や効果的な予防・健康づくりを実施することをデータヘルスと言います。データヘルスにより、戦略的に保健事業を企画立案、実施、評価し、PDCAサイクルを適用して、効果的な保健事業を進めることが期待されています。

コラボヘルスとは?

コラボヘルスとは、事業主(企業)と保険者(健康保険組合)が積極的に連携をしながら、明確な役割分担と良好な職場環境のもと、従業員・家族の予防・健康づくりを効果的・効率的に実施することを言います。コラボヘルスによって、企業と健康保険組合が、それぞれの強みを活かすことで、健康経営やデータヘルスの実効性をより高めることができます。

企業と健康保険組合の強みを活かす

出典:職場の健康が見える 産業保健の基礎と健康経営

コラボヘルスを進めるツールとして、「健康スコアリングレポート」があります。健康スコアリングレポートとは、保険加入者の健康状態や医療費、予防・健康づくりへの取組状況等について、全国平均や業態平均と比較した場合の自健康保険組合の立ち位置を見える化したものです。
経営者に対し、健康スコアリングレポートの説明を行い、事業主(企業)と保険者(健康保険組合)が現状認識と問題意識を共有し、経営者のトップダウンによるコラボヘルスの取り組みを活性化させるために活用ができます。



4. まとめ


産業看護職は、企業ではなく、健康保険組合で雇用されていることも少なくありません。健康保険組合で、被保険者・被扶養者に対する業務を行ったり、企業側に出向し、産業保健業務を行う場合があります。実施する業務の目的や根拠となる法令に伴い、求められる能力や知識、そして技術は異なります。
企業と健康保険組合、両者が連携して、役割を分担することによって、働く人を包括的に捉えた健康管理の実践が可能となります。健康経営の実施に当たっても、コラボヘルスの積極的な推進がますます重要となっています。



■執筆:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■参考文献
岡庭 豊(2019)職場の健康が見える 産業保健の基礎と健康経営.医療情報科学研究所
森晃 爾(2010)看護職のための産業保健入門. 株式会保健文化社
全国健康保険協会ホームページ
経済産業省|企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~(改訂第1版)
厚生労働省|データヘルス計画作成の手引き(第3期改訂版)
日本健康会議|健康スコアリング活用ガイドライン2023年度版



お役立ちサービス



コメントする