さんぽLAB

記事

ストレスマインドセットとは?

ストレスマインドセットについて、皆さんはご存知でしょうか?
メンタルヘルス対策の重要性が説かれ、対策が強化されていく一方で、ストレスの要因は増えており、人々はストレスにさらされやすくなってきました。そのため1人1人がストレスと上手く付き合っていく必要があり、向き合うのに有効となるのがストレスマインドセットなのです。今回はストレスマインドセットについてご紹介します。


目次

1.マインドセットとは
2.ストレスマインドセットの研究
3.ストレスとの付き合い方について

1 マインドセットとは

マインドセットとは、私たちが世界を理解し、私たちの思考や行動を導くための心の枠組みです。言い換えれば、マインドセットとは私たちを取り巻く環境の捉え方を方向付け、それに応じた反応を導くはたらきをする信念です。

分かりやすく言えば、色眼鏡をかけているような状態のことです。私たちはいつも色眼鏡を通して世界を見ていますが、私たちの知覚にどのような影響を与えているか意識することはほとんどありません。もし、すぐ隣に立っている人が、私たちと違う考え方を持っていたら、その人の世界観は私たちと異なるかもしれないのです。

2 ストレスマインドセットの研究

まず、ストレスマインドセットに関する研究についてご紹介します。1998年にアメリカで実施された大規模調査では,成人 3 万人が "過去 12 ヵ月間にどれくらいのストレスを経験しましたか?"と尋ねました。また,"ストレスは健康に害を及ぼすと思いますか?"という別の質問も呈示されました。

その8 年後,研究者たちは公的記録を使って誰が亡くなったかを調べました。マイナスな側面として、ストレスが多いと死亡リスクが 43%高まったということが分かりました。しかし、そのようなリスク増加は,「ストレスが健康に害を及ぼす」と信じている人に限って見られました。ストレスが健康に害を及ぼすと信じていない人々については、たとえ高いレベルのストレスを経験したとしても、死亡する割合は増えなかったということが判明しました。

そのため、死亡リスクを高めている要因はストレスだけではないという可能性がでてきました。つまり、ストレスと「ストレスは有害である」という思い込みの組み合わせが死亡リスクを高めていたということです。

また、8 年間で 182,000 人のアメリカ人が,ストレスは健康に害があると信じていたために早死にした可能性があると推定されました。

つまり、「ストレスが有害なのは、そう信じているときだけ」ということになります。

3 ストレスとの付き合い方について

日本政府は 2015 年から、従業員数 50 人以上の企業に対して年 1 回のストレスチェックを義務づけ,労働環境の改善を促しています。弊社、株式会社アドバンテッジリスクマネジメントが2019年に実施した調査では、ストレスチェックの担当者の約26%が「職場環境の改善に消極的」であることが課題と回答しました。したがって、一部の日本企業には変革の準備が整っておらず、ストレスの少ない環境にするための職場改善をすぐに始めることは難しいことがわかりました。
現代社会において、私たちはストレスフルな環境に囲まれており、そこから逃れることは容易ではありません。

したがって、ストレスがいかに有害であるかを伝えるだけで、ストレスを回避したり軽減したりするよう人々を説得することは、ストレス・マネジメントの良い解決策とは言えないかもしれません。「ストレスは人を死に至らしめる!」と脅すこと自体が人の健康を害するかもしれないのです。
ストレスとうまく付き合う方法の1つとして、ストレスを減らしたり避けたりすることではなく、むしろストレスを見直し、受け入れることです。ストレスに対する正しい考え方を持てば、ストレスは私たちをより賢く、より強く、より成功に導くことができると言われています。


今回の記事ではJoint Congress of ICOH-WOPS&APA-PFAW2023で株式会社アドバンテッジリスクマネジメントがランチョンセミナーを開催した際の内容の一部をご紹介しております。
テーマ:ストレス管理の鍵としての考え方: ストレス要因に対する人々の反応を監視し、改善する方法。
座長:岩田昇先生(獨協医科大学大学院 看護学研究科教授)
演者:尾崎由香先生(東洋大学社会心理学部教授)

■ICOHとは(International Commission on Occupational Health)
1906 年にミラノで設立された国際産業保健学会です。世界110か国2000名以上の学会員が所属しています。労働衛生の分野において世界をリードしている学会です。
会員の職種は、医師、労働衛生専門家、労働衛生看護師、安全技師、心理学者、化学者、物理学者、人間工学研究者、疫学者、統計学者、社会科学者、物理療法士など多岐にわたります。
最も有名な活動としては3年に1回開催される労働衛生世界会議で、約 3,000 人の参加者が集まります。次回は2024年にモロッコのマラケシュで開催されます。

コメントする