
2026年の夏も、平年を上回る厳しい暑さが予測されています。近年の気象状況は、かつての「夏」の常識が通用しないフェーズに突入しており、職場における熱中症対策は、従業員の健康・安全を守るうえで、これまで以上に重要な取り組みとなっています
本記事は、産業医の宮本俊明先生をお招きし2026年4月15日に開催したさんぽLABセミナー「またやってくる酷暑の夏に向けて!~職場での実践的な熱中症対策~」の内容をもとに、職場における熱中症対策のポイントをお伝えします。
目次
- はじめに: 記録的な猛暑の現状と2026年の予測
- 熱中症のメカニズムと厚生労働省における定義
- 法改正と職場の義務: 罰則付き「死なせない」対策
- 症状別の緊急度判断と応急処置、対応フロー
- WBGTと危険度の高い作業
- 個人の健康状態の確認
- 休憩室や作業服の工夫と水分補給
- まとめ
1. はじめに: 記録的な猛暑の現状と2026年の予測
近年の日本における夏の気象状況は、これまでの常識を覆す異常事態が続いています。2025年までの3年間、日本各地で猛暑日(最高気温35℃以上)や40℃を超える地点の積算数は史上最多を更新し続けており、気象庁も「これまでに経験したことのない暑さ」という表現を多用するようになりました。
2025年の傾向
2025年の統計では、熱中症による救急搬送は5月から発生していました。特に「梅雨明け直後」や「お盆休み明け」など、体が暑さに慣れていない(暑熱順化ができていない、またはリセットされた)時期に搬送者が急増する傾向がありました。
2026年の見通しとリスク
- 暑さの早期到来: 梅雨明けが平年より早まる見込みであり、6月の段階から体温調節機能が暑さに慣れていない状態で酷暑にさらされるリスクがあります 。
- 猛暑の継続: 近年の記録的猛暑の流れを踏まえると、2026年も平年より気温が高い「猛暑」となる可能性が非常に高いとされています 。猛暑による電力需要の増加が考えられますが、中東問題の余波で電力不足になるのではないか、との懸念もあります。
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気候変動の激化: 夏の前半は圧倒的な猛暑、後半は台風や線状降水帯、集中豪雨による湿度の急上昇が予測されます。「降水量」は全国的にほぼ平年並みの見込みですが、「降水量」だけでなく「降り方」の変化が重要なポイントです。特に「多湿」は、後述する気化熱の放出を妨げるため、熱中症リスクを飛躍的に高めます。
2. 熱中症のメカニズムと厚生労働省における定義
熱中症とは、高温多湿な環境下で、発汗(気化熱)による体温調節等がうまく働かなくなり、「体内に熱がこもった状態」です。
体温調節の仕組み: 人体は発汗による「水の気化熱」を利用して体温を下げます。理論上、100gの水が体表から蒸発することで、体重70kgの人の体温を約1度下げることができます。
発症のプロセス: 高温多湿な環境下では、汗が蒸発しにくくなり、この気化熱による冷却機能が働かなくなります。その結果、体温上昇と調節機能のバランスが崩れ、体内に熱が蓄積されます。
参考:環境省熱中症予防情報サイト 熱中症の予防方法と対処方法厚生労働省による最新の定義: 2025年のガイドライン改訂により、熱中症は「高温多湿な環境下において、体内の水分や塩分(ナトリウム等)バランスが崩れる、体温の調整機能が破綻する等して、発症する障害の総称」と定義されました。この定義には、意識を失うような重症例だけでなく、「熱痙攣」や激しい頭痛、判断力の低下といった幅広い症状が含まれます。
3. 法改正と職場の義務: 罰則付き「死なせない」対策
講師: 宮本 俊明 先生
産業医科大学産業衛生教授、帝京大学公衆衛生大学院非常勤講師、労働衛生コンサルタント、医学博士
現場における産業医活動として熱中症予防対策、過重労働対策、メンタルヘルス対策、職場巡視の体系化、化学物質の自律的管理などの推進の傍ら後進育成にも熱心に取り組み、2007年に日本産業衛生学会奨励賞、2013年に中央災害防止協会の緑十字賞を受賞。




