社内文書、メールの書き方~今更きけない産業看護職のためのビジネスマナー~
産業保健活動の目的は「職場で労働者が健康で安心して働ける環境を整えること」です。この目的を達成するためには企業や事業場全体の協力が必要であり、産業看護職にはこうしたプロセスを推進するためのコミュニケーション能力が求められます。
産業保健活動においては、さまざまなメールや文書を作成する機会があります。これらのコミュニケーションを円滑に行うためには、メールや文書におけるビジネスマナーを理解し実践することが重要です。
本記事では、社内文書やメールの書き方を中心に説明します。
目次
1.社内文書の書き方
2.ビジネスメールの基本
3.まとめ
1 社内文書の書き方
ビジネス文書は主に、社外に発信する社外文書と社内に伝達する社内文書に分けられます。
ここでは、産業看護職が作成する機会が多い社内文書について説明します。
社内のビジネス文書には、議事録や報告書、各種の届出書、活動を提案するための企画書、部署から社内への通知文書、社内で意思決定を図るための稟議書などがあります。
各文書には、事業場や部署ごとに定められた書式やルールが存在することがあります。文書を作成する際は、定型書式やルールの有無を必ず確認しておき、その書式やルールに従うようにしましょう。
書式やルールがない場合も、過去の文書を参考にすると良いでしょう。
一般的に、文書は横書きA4サイズの用紙にまとめ、ページ数は最小限に抑えるべきです(可能なら1ページ)。補足資料などは別紙にし、必要に応じてページ数をつけます。
目的を明確にし、管理しやすくするため用件は1文書に1件にすることが原則です。
社内文書は効率性を重視しますので、冒頭の挨拶や結語は省略できます。
内容を端的に伝えるため、結論を先に書くよう心がけます。
特に報告書や案内文書などは5W3H(いつ、どこで、誰が、誰に、何を、どんなことを、なぜ、どのように、どのくらい、いくらで)を用いて、内容を具体的かつ明確に記載します。
以下は、一般的な社内文書で用いられる様式です。
日付、受信者、発信者名、連絡先などの書き方に、事業場や部署内でルールがある場合にはそれに従う必要があります。
①発信日付
西暦、和暦などの記載方法は他の文書と統一しておく
②受信者名
- 個人名でなく、役職名のみでよい
- 殿を付けて『営業部長殿』など
- 同じ文書を複数の人に出す場合は、対象となる人に応じて『部長各位』『関係者各位』または『各位』とする(各位のあとに、『殿』や『様』はつけない)
③発信者名
- 個人名でなく、役職名や組織名などで書く
- 発信者は文書全体の責任者となる
④表題
- なんの文書であるかすぐにわかるように、簡潔にする
- 表題のあとに、文書の性質を(お願い)(案内)(通知)などを( )で入れると分かりやすい
⑤本文
- 用件を簡潔に書く。具体的な内容は⑥の記書きに箇条書きで書く。「標記について」や「下記の通り」というような言葉がよく用いられる。
⑥記書き
- 具体的な内容を箇条書きで書く
⑦追記
- 注意事項や補足することがあれば書く
⑧添付資料
- 添付、同封資料があればその名称と数量を記す
⑨以上
- 文書全体が終了したことを示す
⑩担当者名(連絡先)
- 直接の担当者がいる場合は、部署、氏名、連絡先を記載する
- 発信者と担当者は異なることに注意が必要
社内に発信する文書などの場合には、内容や表現について上司や責任者にチェックしてもらうことが必要です。文書のフォーマットや言い回しについて指摘を受けた場合には、同じミスをしないようフィードバックされた内容をメモしておくと良いでしょう。
2 ビジネスメールの基本
ビジネスの現場にメールは欠かせないものです。しかしその気軽さから、文章が整理されず冗長になったり、逆に言葉足らずになったりして、内容を正確に伝えることができず誤解を生む場面も少なくありません。ビジネスの場であることを踏まえた丁寧な言葉遣いをするようにしましょう。
■送信時間や曜日への配慮
メールは相手の都合を気にせず自分のタイミングで送信できるため便利ですが、週末の終業時間近くにメールをする場合などは、「週明けの確認で問題ございません」「お返事は急ぎません、〇日の〇時頃までにお返事いただけますと幸いです」などを添えるとよいでしょう。
また、早朝や夜遅くに送信するのは控えるようにしましょう。
■TO、CC、BCCの使い分け
メールの宛先にはTO、CC、BCCの3種類があります。
- TOはメールの主な受信者で、具体的なアクション(返信など)が期待される人に使用します。
- CCは情報共有のために用いられ、メール内容に対する直接的なアクションを期待されない人を追加します。
- BCCは受信者のメールアドレスを他の受信者から隠すために使用され、特に、数の受信者に同じ内容のメールを送信する際に用いられます。BCCに記載すべきメールアドレスを誤ってTOやCC欄に書いてしまうミスには注意が必要です。
■ビジネスメールのポイント
ビジネスメールの目的は、大きくは「相手に情報を正確に伝えること」、「相手に依頼した行動をとってもらうこと」の2つに分類されます。
報告だけのメールなのか、それとも何かアクションを取る必要があるのかが伝わるように、メールの件名を工夫するか、メールの冒頭でわかりやすく用件を記載するようにしましょう。
また、社内メールの書き方にも社内や部署のローカルルールが存在する場合もあります。ルールがある場合はそれに従うと、受信者に内容が伝わりやすくなります。
■メール作成時の注意点
- 件名は受信者がメールの内容を即座に理解できるよう、具体的に、簡潔に記載する
- 返信メールの件名は基本的には変更しない。内容によっては、【再送】【改訂】【最新】などつけるとわかりやすい
- どのような用件なのか、件名や、最初の数行を読んだだけで相手に伝わるように書く
- メールに盛り込む内容に漏れはないか確認する。
- 返信の場合は、相手の要求に対して適切に答えているか確認する
- 本文に書くべき内容と、添付ファイルにすべき内容を選択する
- 内容が複雑な場合は、見出しをつけたり、文章ではなく箇条書きで説明したりして整理し、簡潔に伝わるようにする
- 相手にわかりにくい専門用語や医学用語を用いていないかを確認し、目的に合わせて別の言葉で説明する
- 添付ファイルの添付漏れがないか確認する
- 重要文書、個人情報などが含まれるファイルを添付する際には、パスワードロックをかけるなど社内ルールに則ったかたちで送付する
- 返信や提出などの締め切りがある場合には、締め切りを明確に記載する
- メールの最後には署名を入れ、所属や連絡先などを記載する
- メールした後に、電話や対面でフォローする必要があるかを検討する
■受信したことを相手に知らせることも重要
返信が必要なメールには、24時間以内に返信することを心がけるとよいでしょう。検討や決定するのに時間がかかる場合は、とりあえずメールは確認したことを知らせる返信をすると相手の安心につながります。
すぐに答えられる部分は送り、検討が必要なことはいつまでに返答するかの目途を伝えることも、相手への心配りです 。
■生成AIの活用
社内で利用が許可されている場合、わかりやすいビジネス文書を短時間で作成するために、生成AIを利用して、メールや文書の下書きを作成したり文章の校正を行なったりすることができます。
しかし生成AIの提案内容をそのまま使うのではなく、それを参考にしながら最終的には自分の言葉で手直しすることが重要です。また、生成AIの利用にあたってはプライバシー保護や情報の取扱いなどの社内ルールを守ることが必要です。
4 まとめ
産業看護職が事業場内で効果的な産業保健活動を展開するためには、多様な関係者とコミュニケーションをとり、信頼関係を構築することが必要です。そのためには、明確でわかりやすい文章を作成する能力が不可欠です。
また昨今では、増えつつある外国人労働者へのアプローチとして、多言語対応のほか外国人社員にも伝わりやすい「わかりやすい日本語・やさしい日本語」で情報提供することも求められます。事業場内のニーズに応じて、明瞭で理解しやすい文書を作成し、産業保健活動をさらに推進していきましょう。
■執筆:さんぽLAB 運営事務局 保健師
■監修:難波 克行 産業医
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■監修医師のご紹介
産業医 難波 克行 先生
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』
■参考文献
田巻華月(2022)安心と自信を手に入れる!ビジネスマナー講座. 同文館出版株式会社
森晃爾(2023)改訂8版嘱託産業医のためのQ&A. 労働調査会