休職開始時~休職中の対応として押さえておくべきポイント【トラブル予防も解説】
望まない休職にならないように対策をしても、どうしても休職してしまうケースはあります。では休職開始時の対応は何を注意すればよいのでしょうか?本記事では病気休業をする社員に対して、休業開始時から休職中にかけてどのような対応が必要か説明します。日々の業務にお役立てください。
※本記事は次の動画の内容(一部)を編集して作成しています。動画で見たい方は以下リンクよりご覧ください。
▶③休業中の面談から生活記録表を導入した際の事例を学ぶ【職場復帰支援勉強会】
【目次】
1. 休業制度の適切な伝え方
2. 休業初期の対応のポイント
3. 休業中によくあるトラブル
4. 休業中の面談
1.休業制度の適切な伝え方
場面紹介
うつ病で会社をしばらく休むことになった鈴木さん。社内には病気休業をするための制度があり、休業期間や給料、賞与、傷病手当金等の説明を人事担当者から聞くことになりました。人事担当者は社内規定の関係する部分を示しながら鈴木さんに説明をしており、鈴木さんもメモを取りながら一生懸命聞いています。しかし、体調が悪いためか辛そうに見え、人事担当者も心配しています。無理させられないなということで、本当に大事な部分だけしっかり伝えて30分ぐらいで説明を切り上げ、「分からなかったらいつでも連絡してくださいね」と説明を終えました。
クイズ
休業制度の適切な伝え方はどれでしょうか?
①時間をかけて細かく説明する
②書面にして渡す
③回復を待ってから説明する
解説
病気でこれからお休みする方は非常にいろいろなことが心配になっています。なので、必要なことをしっかりと説明をして安心して治療に専念してもらうことがポイントになります。
本会社をクビにならないか、給与はもらえるのか、生活に困るのではないかということで必要以上に悩んでる方もいます。病気が気分を落ち込ませることもあります。体調が悪いと話を聞いてもあまり頭に入ってこないということがよくあります。口頭で簡単に説明した上で大事なことは書面にしてお渡ししておくというのが適切でしょう。書面にしてお渡ししておけば、病気が少し回復した後に本人に確認していただけるだけでなく、ご家族にも見ていただけるので安心してもらうことができます。
2.休業初期の対応のポイント
休業初期の対応のポイントは、安心して治療に専念できる環境を早くつくることです。
「迷惑をかけてみんなに申し訳ない」「休んでしまって収入は大丈夫だろうか」「会社をクビになってしまうのでは…」「どうして自分がこんな病気に…」「本当に治るのだろうか…」「仕事を続けられるのだろうか」
休業した人はこのように様々な不安を抱えています。こうした不安が強すぎると回復がうまく進まなかったり、復職を焦ったりすることがあります。
休業できる日数や、その間の収入、復職までのプロセス、困ったときの連絡先等を記載した紙をお渡ししておくというのが良いでしょう。 書類であれば家族も見ることができ、後から本人もゆっくり見ることができます。また主治医にも見てもらえるなどいろいろなメリットがあります。
3.休業中によくあるトラブル
休業中によくあるトラブルに、本人と連絡が取れなくなるという事があります。連絡をしても返事がない、メールに返事がない、電話も出ない、というような状態です。家族の連絡先はわかっているが、ご本人の承諾なく連絡してもよいのだろうかと迷っているうちにどんどん時間が過ぎてしまうケースもあります。
そこでおすすめの方法は、休業開始時の説明の時に本人の連絡先と合わせて緊急連絡先として家族の連絡先も聞いておくことです。「1週間以上返事がない場合はご家族に連絡します」と説明をした上で連絡先を確認しておくといざという時に対応が素早くできるのでおすすめです。
4.休業中の面談
休業中も、できるだけ毎月社員と連絡を取りましょう。産業医との連絡面談を実施するのも効果的です。
休業中に連絡を取らないとを本人が不安になってしまいます。それを相談することもなかなかできず、十分に回復しないうちに焦って復職の診断書を持ってくるということが結構あります。そこで初めて産業医面談をするというようなケースもありますが、休業中の様子がや本人が今どのくらい回復してるかの評価が簡単ではありません。本人が「頑張ります」と無理をして面談にしてくるため元気そうに見えることがあり、結局診断書のまま復職をしてしまうこともあるでしょう。本人が無理をして復職をしても、復職後の再発の原因になることがあります。
休業中も面談を行うメリットは、体調の回復状況がよくわかることです。回復のプロセス全体が眺められるので、本人に「次はこんなことをやってみませんか?」といったアドバイスができたり、本人が今不安に思っていることの話を聞いて制度の情報提供をしたりなど、様々な不安のケアができます。また、職場復帰の準備を回復状況に応じてタイムリーに進められるというメリットもあります。
職場復帰支援は、社員がお休みを始めた時から始まるものではなく、職場で具合が悪そうな時からスタートしています。そのときから上手く健康管理室につながるような段取りや教育が必要です。休業した場合は、社員が安心して治療できる環境をどう作っていくかというところが重要です。
講師
難波克行(産業医, 労働衛生コンサルタント)
アドバンテッジリスクマネジメント 健康経営事業本部顧問
アズビル株式会社 統括産業医
メンタルヘルスおよび休復職分野で多くの著書や専門誌への執筆
YouTubeチャンネルで産業保健に関わる動画を配信
代表書籍
『職場のメンタルヘルス入門』
『職場のメンタルヘルス不調:困難事例への対応力がぐんぐん上がるSOAP記録術』
『産業保健スタッフのための実践! 「誰でもリーダーシップ」』