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【セミナー報告】あなたも前向きになれる!褒めて進める産業保健とメンタルヘルス― 心理的安全性を高める「ほめ達!」の実践法とは ―

あなたも前向きになれる!褒めて進める産業保健とメンタルヘルスの実践

第99回日本産業衛生学会において、「あなたも前向きになれる!褒めて進める産業保健とメンタルヘルス」をテーマにランチョンセミナーを開催いたしました。
本セッションは予約受付当日で満席となるなど、参加者の関心の高さがうかがえました。

座長は浜口伝博先生、演者は平野井啓一先生にて、ご講演をいただきました。
本講演では、「ほめる」という行為を単なるコミュニケーション技術としてではなく、職場の心理的安全性を高め、メンタルヘルス対策にも寄与する重要な要素として捉え、その具体的な活用方法が紹介されました。

この記事では、ランチョンセミナーの内容をもとに、その要点を整理しながら実践ポイントを紹介します。

講師平野井啓一先生プロフィール


目次

  1. 「ほめる」とは何か人モノ出来事の価値を発見し伝えること
  2. 褒める行為がもたらす心理的効果とセルフケア
  3. 「ほめる」実践事例自動車教習所における成果
  4. 職場改善に活かす具体的スキル
  5. 相手の成長を支える指導のあり方

開催概要

日時:5月29日(金)12:25~13:25
会場:第3会場(大阪国際会議場 10F 1003)
座長:浜口 伝博 先生 (一般社団法人 産業医アドバンスト研修会)
演者 :平野井 啓一 先生 (株式会社メディカル・マジック・ジャパン)
主催:株式会社アドバンテッジリスクマネジメント


1.「ほめる」とは何か|人・モノ・出来事の価値を発見し伝えること

本セミナーの核となるのは、「ほめる」という言葉の再定義です。

一般的に「ほめる」と聞くと、

  • お世辞
  • 相手を気持ちよくさせるための言葉
  • 行動をコントロールする手段

といった印象を持つ方も少なくありません。

しかし、日本ほめる達人協会では、ほめることを以下のように定義しています。

「価値を発見して伝えること」

ここで重要なのは、

  • 対象は「人」だけでなく「モノ」「出来事」にも及ぶ
  • 一見ネガティブに見える事象の中にも、価値を見出す視点がある

という点です。

例えば、ある法律事務所の新入社員が派手な服装で出勤してきたため、注意を行ったものの、本人は行動を改めようとしませんでした。そこで、なぜそのような服装をしているのかを本人に尋ねたところ、着用している派手な衣服は家族の形見であることが分かりました。

このように、職場の服装規定に反した行動の背景に「家族への想い」があると判明した場合、その価値に目を向けて認めることで、結果的に行動の改善につながる可能性があります。

この事例からも分かるように、一見するとマイナスや、ルール違反に思える行動でも「見方を変えること」でコミュニケーションの質は大きく変わることが示されました。

また、「ほめる」という行為は、決して相手をコントロールするための手段として用いるものではなく、人ができるのはあくまで「相手に影響を与えること」にとどまる、ということなのです。


2.褒める行為がもたらす心理的効果とセルフケア

ほめることは他者だけでなく自分自身のメンタルにも影響します。

その理由として紹介されたのが「人称を区別できない脳の特性」です。

脳は人称を区別できない説明図

人間の脳は、

  • 自分が発した言葉
  • 他者から受けた言葉

を厳密には区別できないとされており、誰かを評価する言葉は自分自身にも影響を与えます。

つまり

  • 否定的な言葉を使う → 自分の心も傷つく
  • 肯定的な言葉を使う → 自分の心も整う

という構造です。

だからこそ、心がざらついているときや不安定なときほど、意識して前向きな言葉を選び、それを周囲に伝えていくことが重要になります。そうした積み重ねが、自分の心を落ち着かせることにもつながっていきます。

ほめることは、周りのためだけではなく、自分自身の心を整えるためにも活用できるものです。


3.「ほめる」実践事例:自動車教習所における成果

「ほめる」ことの効果を示す具体例として、自動車教習所の取り組みが紹介されました。

三重県伊勢市にあるいわゆる「ほめちぎる教習所」では、「人は認められて成長する」という考えのもと、指導の方針を「叱る」から「ほめて伸ばす」へと転換しました。

従来の教習所では、ミスに対して注意や指摘を中心とした指導が行われることが一般的です。しかし、この教習所では、たとえミスをした場合でも、まずはできている点に目を向けて言語化することを徹底しています。

例えば、S字カーブで脱輪した場面では、「内輪差を考えて」などとすぐに指導を行うのではなく、まず

「きちんと止まれてえらいですね」

といったように、安全にブレーキを踏めたという行動を評価します。そのうえで、改善点を伝えるという順序で指導が行われます。

このようなアプローチにより、受講者は過度な緊張や萎縮を感じることなく、安心して運転に取り組むことができるようになりました。

その結果として、

  • 卒業検定の合格率の向上
  • 卒業後の事故率の低下

といった成果が報告されています。

教習所の合格率と事故率のデータ推移グラフ

さらに注目すべき点として、教習所業界全体が少子化や免許取得者の減少により集客に苦戦する中、この教習所では受講者数が増加していることが挙げられます。地域外からも受講者が訪れるなど、「ほめる指導そのもの」が価値となっている点は特徴的です。

自動車学校業界では、少子化や若年層の免許離れなどを背景に、集客や人材育成が大きな課題となっています。その中で、「ほめること」は職員の定着や教育の質、ひいては選ばれる理由にもつながる要素として、経営課題の一つと捉えられています。

産業保健の現場においても、労働災害防止やヒューマンエラー対策を考える際、単に「ミスを防ぐ」ための注意喚起だけではなく、安心して行動できる心理的環境の整備が重要です。

「ミスをしてはいけない」という過度なプレッシャーではなく、「適切な行動ができた点を認める」視点を取り入れることが、結果的に安全性の向上につながる可能性があるといえるでしょう。


4.職場改善に活かす具体的スキル

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講師|平野井 啓一 先生

秋田大学医学部医学科卒(2004年)
株式会社メディカル・マジック・ジャパン代表取締役
日本産業衛生学会指導医/社会医学系専門医・指導医
日本産業衛生学会関東地方会代議員
日本産業ストレス学会評議員
労働衛生コンサルタント(保健衛生)
公認心理師
(一社)日本アンガーマネジメント協会ファシリテーター/叱り方トレーナー
(一社)日本ほめる達人協会特別認定講師/同協会2023年認定講師コテスト優勝
日本温泉気候物理医学会温泉療法医

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